家を建てる時には様々な不安や疑問がつきものです。
その中でも最も大きな心配がお金の問題です。
二世帯住宅は一般的な戸建住宅と比較すると高くなりやすく、より慎重な資金計画が求められます。
一つの建物に二つの世帯が同居するという性質上、間取りや設備の数などにも特別な注意が必要です。
二世帯住宅が高くなる理由
一般的な一世帯が暮らす戸建住宅の平均は2,700万円ほど。
一方、二世帯住宅の平均価格は3,600万円ほどにもなります。
同じ戸建住宅でも、二世帯が暮らす住宅は一世帯で暮らす住宅よりも建築費がかかります。
これには大きく分けて二つの理由があります。
設備費用がかかる
建築費の中で大きな割合を占めるのが設備費用です。
キッチンやバスルーム、トイレなどは一つつくるだけでも数十万円から数百万円かかります。
二世帯住宅の場合、普通の家に比べて設備の数が倍になるため、それだけ費用もかさむことになります。
広さが必要になる
家族の人数が増えれば、当然寝室も多く必要になります。
キッチンやバスルームを増やす場合は、そのための面積も必要になります。二世帯住宅は一世帯住宅よりも床面積が必要となるため、当然建築費用もかかりますし、土地もより広いものが求められます。
二世帯住宅のメリット
二世帯住宅は一世帯のための住宅よりも高価になります。
しかし、二世帯で暮らすことには金銭的なメリットも存在します。
節税効果
二世帯住宅にすることで、相続税を抑えることができます。
親から土地を相続すると相続税が発生します。
しかし相続する土地に自分の住む二世帯住宅がある場合、相続税が安くなるのです。
実家の近くに土地を買って家を建てるぐらいなら、二世帯住宅に建て替えてしまうことも検討してみましょう。
住宅ローンの返済負担を軽減できる
二世帯住宅を建てるにあたって、親からの援助を受けることができれば、住宅ローンの返済が楽になります。
頭金を増やせば、借入額を減らして月の返済額を抑えたり、返済期間を短くして支払利息を削減したりできます。
生活費が節約しやすい
電気や水道、ガスなどの基本料金は一軒ごとにかかります。
二世帯住宅にしてしまえば、今まで二軒分支払っていた料金をひとまとめにできます。
また、家族の人数が増えれば、食材や日用品を安くまとめ買いしやすくなります。購入費を抑えられるだけでなく、無駄も発生しにくくなるため、節約につながります。
二世帯住宅の種類
二世帯住宅は、設備や部屋の共有度合いに応じて「完全同居型」「部分共有型」「完全分離型」の3つに分けられます。
一口に二世帯住宅といっても、どれだけ共有するかによって建築費用は全く異なります。
一般的に、共有部分は少ない方が互いのプライバシーが守られるため、快適な生活が期待できます。
しかし一方で、分離を進めれば進めるほど設備の数が増えるため、建築費用が多くかかることになります。
家族で予算と生活スタイルをよく話し合い、一番適したタイプを選ぶようにしましょう。
完全同居型の場合
キッチンや風呂などの設備を全て二世帯で共有し、寝室のみ分けるのが完全同居型です。
二世帯住宅というよりも、生活する家族の人数が1~2人増えるという感覚に近いです。
同居にあたって必要となるのは基本的に寝室だけで、キッチンやバスルーム、トイレなどの設備については、一般的な戸建住宅と同じ数しか用意しません。
設備にかかる費用を大幅に削減できるため、建築費用は一世帯向けの戸建住宅よりもわずかに多い程度です。
ただ、生活の場を完全に共有することになるため、プライバシーの問題が発生しやすくなります。
たとえ血のつながった家族でも、それまで長い間別々に暮らしていた人といきなり同居するのは互いにストレスが溜まりやすいです。
また、年齢が違えば生活リズムも異なります。騒音や明るさの問題についても事前によく話し合っておく必要があります。
完全同居型の二世帯住宅は、親が片方1人しかおらず、わざわざ設備を多く準備するまでもないと考えるケースに選択されることが多いです。
相場
完全同居型の場合、住宅価格は2,500万円から3,000万円が相場です。一般的な戸建住宅とほとんど変わりません。
ただし、住宅価格は間取りや設備以上に、依頼する住宅会社やグレード、工法などに大きく左右されます。相場はあくまでも参考程度にとどめておきましょう。
部分共有型の場合
完全同居型と完全分離型の中間に位置するのがこの部分共有型です。
住宅の一部を共有し、一部分離するというスタイルですが、どこを共有するかは個々のケースによって異なります。
玄関のみを共有し、それ以外の部屋や設備は分離するという完全分離型に近いこともあれば、リビングとキッチンのみを分離し、他は共有するということもあります。
共有されることの多いスペースは?
SUUMOが行った二世帯住宅に関する調査から、どんな部分が二世帯住宅で共有されていることが多いのか見てみましょう。
バスルーム:75.0%
キッチン:38.8%
リビング:37.1%
ダイニング:34.5%
階段:30.2%
洗面所:25.9%
トイレ:21.6%
納戸:14.7%
ベランダ:12.1%
最も共有されることが多いのが玄関です。
滞在時間が短いため、プライバシーや使い方などでストレスを溜める心配がありません。
玄関をまとめるだけでコストを下げられるため、完全分離型以外なら玄関は一つにするのがオススメです。
次に多いのがバスルーム。
風呂は高価な住宅設備になるため、節約するならやはりこちらも一つにしてしまうのが良いでしょう。
掃除やメンテナンスの手間も省くことができます。
また、年をとると夜遅くの入浴を避け、昼間や夕方の入浴を選択する人も多いです。
風呂に入る時間が分かれていれば、バスルームが一つでも不便することはありません。
キッチンについては、共有率がぐっと下がります。
システムキッチンを一つにまとめれば大きく節約できますが、やはり使いやすさやプライバシーを考えると、分離した方が快適なケースが多いです。
バスルームの共有率が高い一方で、洗面所は別々に設置している例が多いことにも注目しておきたいです。トイレや洗面所などの水回りについては、部分共有型の場合でもそれぞれに準備しておくと便利です。
相場
部分共有型の二世帯住宅の相場は、設備の共有事情によって大きく変動します。
一般的な価格としては3,300万円から3,800万円程度ですが、個々のケースでばらつきがあるため、頭の隅にとどめておく程度にしておいてください。
完全分離型の場合
建物だけが同じで、それ以外の居住スペースを完全に分けているのが完全分離型です。
キッチンやバスルーム、トイレ・洗面所はもちろん、玄関も別になります。互いの家に行くためには一度玄関から外に出る必要があるという住宅も多いです。
戸建住宅を一つずつ建てるよりは安くなりますが、家の内部は二軒分に等しくなります。価格も一世帯向けのものよりもぐっと高くなります。
ただ、費用はかかるものの、プライバシーがしっかり守られるため、快適性は非常に高いです。互いに近くに住む安心感と、適度な距離感を両立できるタイプの二世帯住宅です。
相場
完全分離型の場合、相場は3,800万円から4,200万円ほどと、家を二軒建てるのと近い価格になります。
他のタイプの二世帯住宅以上に、コストカットに関する意識が重要になります。
住宅ローンの借入金額と返済額
それぞれの相場価格を全額住宅ローンで借りた場合の返済額について考えてみましょう。返済期間は35年、金利は1.5%(固定)とします。
●2,500万円
月の返済額:76,546円
総返済額:32,149,099円
●3,000万円
月の返済額:91,855円
総返済額:38,579,007円
●3,300万円
月の返済額:101,040円
総返済額:42,436,997円
●3,800万円
月の返済額:116,350円
総返済額:48,866,777円
●4,200万円
月の返済額:128,597円
総返済額:54,010,721円
今回は固定金利でシミュレーションしましたが、変動金利の住宅ローンを選べば返済当初の返済額を抑えられます。その他にも、頭金を増やして借入金額を増やせば、支払う利息も少なくなります。
また、今回紹介した相場については建物価格のみとなります。土地の購入が必要になる場合は、土地にかかる費用も計画に入れておく必要があります。
二世帯住宅を安く建てるには?
●共有部を増やす
二世帯住宅を安くつくる上で最も効果的なのがこの方法です。
共有する設備を増やせば、設備購入費を大幅に削減し、建築費用を抑えられます。
ただ、共有部分を増やすことと快適さは基本的にトレードオフの関係です。安く建てることも大切ですが、せっかくの新居での暮らしがストレスばかりでは意味がありません。
何を共有し、何を分離するのか、それぞれの生活スタイルや重視している部分についてお互いに確認し、納得できる形になるようにしっかりと話し合いましょう。
玄関やバスルームについては共有してもあまりストレスにならないという例が多いです。共有部分を増やすならまずに検討してみましょう。
一方、キッチンやリビングなど個人のこだわりが出やすい部分や滞在時間の長い場所については、別々にした方が快適です。
●凹凸の少ない家にする
二世帯住宅に限った話ではありませんが、家を建てるなら凹凸の少ない形状にした方が安くなります。
凹凸があればそれだけ表面積が増えて材料費がかさみますし、柱が増えれば工事の手間も増えます。
上から見た時の形がコの字型の家や、中庭のある家は割高になりやすいです。同じ床面積なら真四角の家の方が経済的です。
横から見た時も同じです。一階と二階の広さはできるだけ同じになるよう心がけましょう
●グレードを抑える
内外装のグレードや設備のグレードを抑えるのも効果的です。
住宅設備は少しグレードを下げるだけで十万円以上の差になります。キッチンを二箇所に分ける場合でも、メインのキッチンはグレードの高いものに、凝った料理をしないサブのキッチンはグレードを抑えたシンプルなものにするという方法もあります。
内装や外装についても、グレードを上げることで機能性も向上させられることもありますが、単に見た目だけの違いならば、節約を考えるべきポイントでしょう。
特に家の外部については、家の中からは見えない部分となるため、こだわってもあまり実感を得られません。外装に予算を割くぐらいなら、設備にお金をかけた方が生活の質が向上します。
●安く建てられる会社に依頼する
注文住宅の価格は、どんな会社が建てるかで大きな差が生じます。
一口に注文住宅と言っても、坪単価30万円台の住宅会社もあれば、一坪100万円を超えるようなところもあります。予算にあった価格帯の住宅会社に依頼することが大切です。
特にローコスト住宅を売りにしているハウスメーカーや工務店は、価格を抑えて家を建てることを得意としています。最近では低価格ながら高性能を実現している住宅も珍しくありません。どんな会社がどんな住宅を建てているのか、よく調べてください。
注文住宅というと大手ハウスメーカーを思い浮かべる人も多いのですが、大手ハウスメーカーの住宅は基本的に高価なものが多く、節約して建てたいという場合には向いていません。
大手の手厚いアフターサービスや耐久性・安心感は魅力ですが、住宅価格には広告費が上乗せされているため、どうしても無名の工務店の住宅と比べると割高になりやすいです。
中小規模のハウスメーカーや工務店をじっくり探す時間が取れるなら、安く建てられる大手以外に依頼するのがおすすめです。
●見積もりを比較する
安く建てられそうな住宅会社を見つけても、すぐに依頼先を決定してはいけません。
まずは候補となる何社かに見積もりを依頼し、その内容をよく見比べてください
住宅価格の相場には幅があります。注文住宅はオーダーメイドの商品である上に、二世帯住宅の価格は共有部分の多さによって大きく違います。これから建てようと思っている住宅の適正な価格は、見積もりを比べてみることでしか分かりません。
また、同じ要望を伝えても、設計する人によって間取りや仕様は異なります。見積もりを比べることは、安く家を建てるだけでなく、より良い家の間取りを模索する上でも重要なヒントになります。
二世帯住宅は割高なだけではない
一世帯だけで暮らす住宅とは違い、キッチンなどの設備が多くなる二世帯住宅は高くなりやすいです。
ただし、二世帯住宅には節税効果や生活費の節約も期待できるため、長期的な視点で考えると、必ずしも割高であるとは限りません。
また、同じ二世帯住宅でもどれだけ世帯間で空間や設備を共有するかによって、建築費用は大きく変わります。キッチンやトイレ、洗面所などは別々にするケースが多いですが、玄関やバスルームを共有すればそれだけで大きく節約できます。
まずは家族で予算や生活スタイル、要望などを話し合い、どんな家にしたいかを決めていきましょう。