広告やパンフレットなどで見かけることの多い「坪単価」。
家の建築費を一坪当たりに換算したもので、建設にかかる費用を想像したり、住宅価格を比較する際によく用いられたりしています。
一見便利そうに見える坪単価ですが、坪単価を参考にしたがゆえにトラブルになったり失敗してしまったりというリスクも存在します。
坪単価とは一体どうやって決められているのでしょうか? また、どうして坪単価が失敗につながることがあるのでしょうか?
坪単価とは?
坪単価は住宅の建設費用を面積で割ったものです。
一坪当たりいくら必要になるかがわかれば、自分の建てたい家の広さの場合にどのぐらいのお金が必要かわかります。
また、違うハウスメーカー・工務店の住宅価格を比較する際にも坪単価が使われることがあります。
例えば1500万円30坪の住宅の場合、坪単価は50万円です。
同じ坪単価で40坪の住宅を建てた場合、建築にかかる費用は2000万円ということになります。
坪単価では実際にかかる費用はわからない
家の価格の目安にされることの多い坪単価ですが、坪単価では実際にどれぐらいお金がかかるかを計算することはできません。
というのも、坪単価を計算する際に使われるのは建物本体の建築費用だけだからです。
実際に注文住宅を建てて住めるようにするには、他にも色々な費用がかかります。
まず、外構工事費。
本体価格には、塀やカーポート、庭、門などにかかる費用は含まれていません。
ガスや水道、電気の工事についても含まれていないことが多いです。
他にも、税金や申請などにかかる諸経費も含まれていません。
また、新居に移るには当然引越しの費用も必要になります。
土地がなければ土地の購入が必要です。
一般的に、注文住宅にかかる費用のうち、建物本体にかかるのは全体の7割~8割ほどだとされています。
例えば本体価格が1500万円でも、それ以外の費用として500万円は必要になるため、全体としては2000万円の予算が必要になります。
坪単価の決め方は会社によって違う
坪単価は住宅価格と面積によって決まりますが、住宅価格の決め方も面積の計算方法もハウスメーカーや工務店によって微妙に異なります。
坪単価に含まれる費用が建物本体価格だというのは先程説明しましたが、どこまでが本体で、どこまでがそれ以外なのかは会社によって異なります。
中には総費用から坪単価を決めている良心的なハウスメーカーもあります。
しかし、坪単価を安く見せたいハウスメーカーの中には、当たり前に必要な設備までオプション扱いとし、安く見せようと画策しているところもあります。
設備やグレードにも差があります。
設備だけでも本体価格の3割ほどを占めるため、設備のグレードを下げれば坪単価も安く見せられます。
例え坪単価が同じ値段でも、そこに含まれている設備のグレードが同等だとは限りません。
面積の決め方にも違いがあります。
延べ床面積の求め方は法律で決められているため、どこの会社でも同じです。
しかし中には、延べ床面積ではなく「施工床面積」で坪単価を決めている場合もあります。
施工床面積の場合、延べ床面積には含まれない玄関やベランダ、吹き抜けなども含まれることがあります。
本体価格を割る面積が広ければ、同じ家でも坪単価は安くなります。
坪単価は最低価格
坪単価が建物のみの値段だと理解していたとしても油断はできません。
建物価格のみに絞ったとしても、実際の家の値段は坪単価よりも高くなるのが普通だからです。
広告などに乗せる坪単価を計算する際の建物価格は、標準仕様の住宅で、オプションなども特に設定されていません。
しかし、注文住宅をつくる際は、施主の要望であれこれ変更を加えていくのが普通です。
希望に応じて内装や設備のグレードを上げたり、オプションを追加したりすれば、当然家の価格は高くなります。
特に坪単価を設定する際は安く見せるため最低限の住宅を想定していることが多いです。
坪単価だけをみて依頼先を決めてしまうと、注文住宅でありがちな「思ったよりも高くついてしまった」という失敗につながってしまいます。
住宅価格が上がる理由にはいくつかありますが、その中の一つに「家の外観」があります。
基本的に、家の値段は建物のシルエットが真四角に近い方が安くなります。
反対に、凹凸があったり、中庭をつくったりすると費用がかさみやすくなります。
これは、家の表面積が増えるのが主な原因で、外壁や屋根に使う材料や工事面積が凹凸によって増えると、住宅価格を無駄に跳ね上げることになります。
家の広さと坪単価
坪単価について考える際にもう一つ注意しておいて欲しいのが、家の大きさの影響です。
建物本体価格にはキッチンや風呂などの設備も含まれます。
こうした設備は建物価格の3割近くを占めるほど高価です。
そして大豪邸でもない限り、キッチンや風呂は一つの家に一つしかありません。
つまり、グレードの全く同じ住宅でも、30坪の家と40坪の家では建物価格のうち設備費用が占める割合が違ってしまいます。
坪単価も広い家の方が安くなります。
広い住宅の方がコストパフォーマンスが高くなるのは設備だけではありません。
材料を運んだり、重機を用意したりなど、工事にかかる手間も大きい家の方が面積あたりで考えると効率が良くなります。
同じ会社の住宅を比べる場合でも、面積が違うと坪単価は当てにならなくなってしまうのです。
坪単価を過信するのは危険
坪単価は様々な要因によって左右されます。
坪単価以外にも色々とお金がかかるだけでなく、計算方法も各社でバラバラです。
安く見せるように工夫された坪単価も多く、実際にはもっとお金がかかると考えなくてはいけません。
注文住宅の購入を考え始めた段階で参考程度にするなら良いですが、実際に予算を考えたり、依頼先を決めたりする際の決め手にするのは危険です。
総費用で考える
注文住宅の費用や予算、計画を練る際は「トータルでいくらかかるか」を考えることが重要です。
坪単価ベースで考えてしまうと、思っている以上にお金がかかったり、予算オーバーになってしまったりする原因になります。
まずは建物以外に、どんなお金がかかるのかを把握しましょう。
建物以外にも、別途工事が必要になりますし、諸経費もかかります。
住宅購入には直接関わりませんが、引越し費用や家具家電購入費についても考えておきましょう。
そして、価格を比べる際は、坪単価ではなく自分の要望通りの家を建てた場合に全部でいくらかかるかで比べるようにしましょう。