住宅の骨組みは丈夫な基礎の上に載っています。
注文住宅では見積書に「基礎工事」や「外壁工事」などと項目ごとに明細が別れていて、それぞれに金額が記載されているんです。
基礎工事は家全体の金額の5〜10%程度とかなり大きな割合を占める部分となります。
今回は基礎工事の内訳を覗いてみましょう。
コンクリートは1立方メートル(㎥)あたりいくらするんでしょうか?
こういった材料の数量や単価は住宅の営業マンでも知らない部分です。
あなたがこれから家を建てたい場合は、値引き交渉時の参考にしていただければと思います。
また、もしあなたが住宅会社の工務担当者の場合は積算の参考にもなります(^^)
1.住宅の基礎工事のコンクリートの㎥単価は?
住宅の基礎は鉄筋コンクリートで出来ています。
鉄筋コンクリートとは、鉄でできた骨組みをコンクリートの肉で覆ったもので、鉄とコンクリートの強さを併せ持った素材です。
鉄は引っ張られる力に強く、粘り強い特徴があります。
コンクリートは、引っ張られたり曲げられたりする力にはあまり強くありません。
その代わり、圧縮される力(上から抑えられる力)には強いんです。
鉄筋コンクリート造は「鉄筋により補強されたコンクリート」という意味で、
「Reinforced Concrete=レインフォースト・コンクリート」
略して「RC造」といいます。
①コンクリートの㎥単価は?
コンクリートは
- セメント
- 水
- 骨材
- 砂
を混ぜて作ります。
材料を混ぜると泥のような感じになり、その状態を「生コン」と呼びます。
生コンを工事現場で型枠に流し込み、固まるまで待つわけです。
↓生コンを型枠に流し込むところ
コンクリートは体積(立方メートル=㎥)で数えます。
1㎥あたりの単価はコンクリートの配合や地域によって変わりますが、一般的な木造住宅に使用するコンクリートの㎥単価は16,125円程度となります。
この金額は温暖で標準的な気候である東海地域(静岡県中部)の例です。
また、住宅会社がお客さんに提示する金額となりますので、住宅会社の実行金額(仕入れ金額)を差し引いた金額が利益となります。
因みに私の家は27坪総二階の木造住宅で、基礎に12.8㎥のコンクリートを使いました。
②鉄筋のkg単価は?
鉄筋は基礎を構成する材料です。
基礎は先に鉄筋を組んでおいて、型枠で囲い、生コンを流し込んで出来ます。
鉄筋は重さ(kg)で数えるんですよ。
kgあたりの金額は、原料の値段によって変わりますが、私の家の例では、
1kgあたり150円でした。
この金額には加工・運搬・施工費が含まれています。
原料のみの値段は1kgあたり85円〜110円程度です。
私の家では1263kg使いました。
27坪の小規模住宅でも1トン以上の鉄筋を使うんですね。
2.住宅の基礎工事の布基礎数量とm単価は?
住宅の基礎は木造住宅と鉄骨(重量鉄骨)住宅で大きく違います。
木造住宅の基礎はベタ基礎といって、コンクリートの板の上に高さ30cmの布基礎(立ち上がり部分)のあるタイプが一般的です。
↓木造住宅の基礎
鉄骨住宅の基礎は各柱を支える巨大なコンクリートの塊を地中梁で繋ぐ形式となります。
↓鉄骨住宅の基礎
家の形や部屋の間取りによって、布基礎の長さが変わります。
木造住宅の布基礎のm単価は、4375円(住宅会社の提示金額)程度です。
このm単価は、コンクリートや鉄筋の数量とは違い、型枠などの施工費を含んで算出したものになりますので、原価(仕入れ値)を引いた金額が住宅会社の利益となります。
鉄骨住宅(重量鉄骨)の場合、布基礎はコンクリートブロックを積んだ構造となり、1mあたりの単価は4,880円程度です。
3.木造住宅の基礎工事の単価相場は?
木造住宅の基礎工事の単価は基礎の面積で表されます。
1坪あたりの単価は50,000円程度です。
1㎡あたりでは15,000円程度となります。
一般的な木造住宅の基礎工事の各項目と単価を一覧表でまとめてみました。
用語は下で解説します。
項目 | 単価 |
---|---|
遣り方(範囲・ガイド) | 37,500円/一式 |
布基礎(立ち上がり) | 4,375円/m |
耐圧盤(ベタ基礎部分) | 6,875円/㎡ |
内部布基礎ベース(地中梁) | 7,500円/㎡ |
コンクリート圧送 | 50,000円/1台 |
アンカーボルト (基礎と土台の緊結) |
187.5円/本 |
ホールダウン金物 (土台と柱の緊結) |
1,250円/本 |
布基礎天端レベル (高さをそろえるため) |
750円/m |
基礎外周面仕上げ (刷毛引き仕上げ) |
1,125円/m |
上記単価は住宅会社がお客さんに提示する金額となります。
原価(仕入れ値)を差し引いた金額が住宅会社の利益です。
4.鉄骨住宅の基礎工事の単価相場は?
鉄骨住宅(重量鉄骨)は木造住宅よりも重いため、より大きく頑丈な基礎が必要です。
施工技術的にも木造の基礎より高度な知識と経験が必要ですね。
鉄骨住宅の基礎の単価は、1坪あたり111,750円程度かかります。
1㎡あたりでは33,750円です。
総2階40坪の鉄骨住宅で、1階の基礎面積20坪の場合、基礎だけで2,235,000円かかる計算になりますね。
鉄骨住宅の基礎単価の内訳は以下の通りです。
項目 | 単価 |
---|---|
遣り方(範囲・ガイド) | 37,500円/坪 |
鉄骨柱基礎(大) | 77,500円/一基 |
鉄骨柱基礎(中) | 63,750円/一基 |
鉄骨柱基礎(小) | 46,250円/一基 |
地中梁 | 18,750円/m |
布基礎(外周部) | 4,688円/m |
布基礎(内部) | 4,375円/m |
アンカーボルト M30 | 290円/本 |
ベタ基礎天端ならし | 250円/㎡ |
床付け・砕石転圧(100mm) | 1,250円/㎡ |
ワイヤーメッシュ(ベタ基礎内部) | 1,000円/㎡ |
ベタコンクリート | 2,875円/㎡ |
犬走りアンカー (離れ止め) |
25,000円/一式 |
犬走りコンクリート | 5,625円/㎡ |
基礎外周面仕上げ | 1,650円/m |
コンクリート圧送 | 43,750円/台 |
残土処分 | 1,875円/㎡ |
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5.住宅の基礎工事の用語解説
上で紹介した単価一覧の用語を解説します。
【木造住宅基礎の用語】
①遣り方
遣り方は、基礎工事の最初にやる作業で、基礎の位置や角度を正確に指定するガイドラインを作ります。
木の杭や「貫(ぬき)」という材料を組み合わせて囲いを作り、水糸で壁や柱の芯の位置を正確に出すんです。
②布基礎
布基礎には2つの意味があります。
- ベタ基礎の立ち上がり部分
- 独立基礎の別名
ですね。
今回はベタ基礎の立ち上がり部分という意味で使っています。
③耐圧盤
耐圧盤は、ベタ基礎のベタ(床)の部分です。
鉄筋コンクリートでできていて、基礎が傾いたりねじれたりするのを防ぎます。
厚さは一般的には150mmです。
④内部布基礎ベース
壁が来る位置など内部の立ち上がり下部は、耐圧盤(150mm)よりも掘り下げて深くすることがあります。
そのほうが強いからですね。
内部の基礎ベースは「地中梁」ともいいます。
⑤コンクリート圧送
コンクリートミキサー車で運んできた生コンをポンプ車で吸って型枠に流し入れる作業のことです。
↓コンクリートミキサー車
コンクリートミキサー車は建築用語では「トラックアジテーター」といいます(^^)
↓ポンプ車でコンクリートを型枠に流し込むところ
⑥アンカーボルト
布基礎に埋め込んで、土台を緊結するためのボルトです。
↓基礎の天端から出ている短い棒がアンカーボルト、長い方はホールダウン金物
⑦ホールダウン金物
ホールダウン金物は、土台と柱を緊結するボルトです。
通常はアンカーボルトと同様、布基礎に埋め込みます。
2階の柱はホールダウン金物で胴差し(2階の床梁)と緊結します。
↓柱とホールダウン金物を緊結したところ
⑧布基礎天端レベル
布基礎天端レベルは、布基礎を水平に仕上げて床ができるだけ傾かないようにする作業です。
布基礎の上に水っぽいモルタルを流し、自然と水平になるようにする方法と、硬めのモルタルを器具を使って均す方法があります。
それでも正確には水平とはならず、土台の下にスペーサーを入れて微調整することが多いです。
⑨基礎外周面仕上げ
型枠を外したばかりの状態は「打ちっぱなし」といって、型枠と接していた部分が露出しています。
コンクリートは骨材という小さめの石がランダムに入っているので完全なツルツル面にはなりません。
必ず気泡がはいるので、打ちっぱなし面には穴がいくつもあるんです。
その状態では水が基礎表面から内部に入り込み、鉄筋を錆びさせる原因となります。
鉄筋が錆びると基礎の強度が著しく下がるため、それを防ぐために表面をモルタルで薄く塗って仕上げるのが一般的です。
↓打ちっぱなしの基礎
↓モルタル刷毛引仕上げした基礎
【鉄骨住宅基礎の用語】
⑩鉄骨柱基礎
鉄骨の柱を支える独立した基礎です。
一般的に鉄骨造の建物の基礎は独立基礎を地中梁で繋ぐ形式なんです。
柱の断面寸法や支える荷重によって独立基礎のサイズも変わり、アンカーボルトの本数やベースプレート(柱とアンカーボルトを緊結する金物)のサイズも変わってきます。
⑪地中梁
鉄骨柱の独立基礎を地中で繋ぐ梁です。
地中梁は鉄筋コンクリート製です。
⑫布基礎(鉄骨)
外壁がくる位置に配置する基礎です。
木造住宅の布基礎は型枠に生コンを流し込んで作る鉄筋コンクリートですが、鉄骨造の布基礎はコンクリートブロックを積んで鉄筋を差し込んでモルタルでくっつける形式が一般的です。
表面はモルタル刷毛引き仕上げとなります。
⑬アンカーボルト
独立基礎と鉄骨柱を緊結するボルトです。
最近は柱自体を独立基礎に埋め込むのではなく、埋め込んだアンカーボルトとベースプレートによって緊結する手法を使うことが多いです。
⑭床付け
鉄骨造における床付けとは、基礎完成後に埋め戻した土を転圧し表面を厚さ100mmの砂利層で整地することです。
1階のスラブ(コンクリートの床)の下地となります。
⑮ワイヤーメッシュ
ワイヤーメッシュは6mmのワイヤーを縦横150mm間隔で作った網です。
コンクリートの割れ止めのために、スペーサーによって浮かせ、スラブコンクリートの真ん中にくるようにします。
⑯犬走り
犬走りはもともとコンクリートで作る細い通路のことですが、最近では小さめのテラスやエコキュートなどの架台コンクリートのことも犬走りと言ったりします。
⑰残土処分
残土とは、基礎を作る際に出る余った土のことです。
掘った土は10〜45%体積が増えます。
目次 ~この記事に書かれていたこと~
家づくりや雑学として参考にしてみてください。
日本は先進国の中で、家や建物に関する知識が最も乏しいと言われています。
ただ、年配の方は家の仕組みや材料についてよく知ってるんですよね。
建築知識が乏しいのは50代以下の若い人たちです。
それは、今と昔の社会環境が違っていたからだと言われています。
昔は周囲の家はほとんど大工さんが建てていました。
ガードも緩かったため、子供達は作り途中の家で遊んだりできたんですよね。
みんな家を作る過程を身近に見ていたわけです。
つまり教育されていたんではなく、建築が文化として浸透していたんですね。
最近は危険防止のために子供や部外者は建築現場に入れません。
また、プライバシーを重視するあまり、よその家の建築現場をまじまじと見ることもなくなってしまいました。
自然と家の知識が入ってくる環境ではなくなったことが、日本人の家や建築知識の低下を招いた要因だと考えられます。
それを補うような教育がないことが問題ですね。
海外では「住宅」について義務教育の中で学ぶそうですよ。
建築の専門家になりたいという子供も多く、建築家は医者と同等に尊敬されています。
グローバル化がますます進む今後、世界に立ち遅れないように、家を建てる機会にできるだけ勉強してみてください。
このサイトでは建築知識を豊富に分かりやすく書いていますので、参考にしていただければと思います。