マンションでも一戸建てでも、家を買う時には住宅ローンを組む方が一般的でしょう。
ローンですから当然借金です。借金をするというとなんだか怖いことのように思えて、家を買うこと自体にも不安を感じてしまう人もいます。
しかしこの住宅ローン、うまく使えば資産を増やすことにもつながるのです。
また、最近では1000万円台、中には1000万円以下で家が建てられるローコスト住宅も販売されています。
これぐらいの価格であれば新築でも貯金で買えてしまうという人もいるかもしれません。
ただ、現金一括で住宅購入ができるほど貯金がある人でも、家を買うなら住宅ローンを組んだ方が得をするのです。
なぜ住宅ローンという「借金」をした方が得なのでしょうか?
現金で家を買うメリット?
住宅ローンを組むとなると、いろいろな手間賃が発生します。
まず保証料。金融機関によって違いはありますが、1000万円あたり20万円ぐらいが目安です。
3000万円借りた場合は保証料だけで60万円必要になります。
次に手数料。
数万円のこともあれば、融資額の2.16%という金融機関もあります。
融資額の割合から手数料が決まる場合、3000万円の借り入れで手数料は60万円以上となります。
その他にも契約に必要な印紙代などもあります。
契約時の費用に加え、借金ですから利息も発生します。3000万円を35年ローン、金利1.2%で借りた場合は利息だけでも600万円以上。
現金一括で購入した場合、こうした費用のほとんど節約することができます。
しかし、それでも現金一括で購入した場合のデメリットの方が大きいのです。
住宅ローン控除が使えない
まず、住宅ローンを組まなければ住宅ローン控除は当然使えません。
住宅ローン控除は10年間の間、住宅ローン残高の1%の金額を所得税から控除するものです。
控除額は1年間で最大40万円、10年で最大400万円の控除が可能です。
ローンの残高は年々減っていくため最大限住宅ローン控除を活用するのはあまり現実的ではありませんが、それでも無視できない控除額になります。
また、住宅ローン控除をできるだけ活用するためにはある程度の残高が必要です。
頭金を増やしてローンの割合を増やせば金利を下げることにつながりますが、あまり頭金を増やしすぎると今度は住宅ローン控除額が少なくなってしまいます。
頭金をいくらにするかはしっかりシミュレーションをして決めるようにしましょう。
その他にも、すまい給付金などの補助金は現金購入すると対象外になってしまう場合があります。
すまい給付金との給付額は最大で30万円と貰いそこねるには惜しい金額です。
住宅ローンを組むのは保険に入るのと同じ
住宅ローンを組む際には、団体信用生命保険に加入するのが一般的です。
団体信用生命保険(団信)は、加入者が万が一病気や怪我、死亡などでローンの返済が困難になった時にローン残債をゼロにする保険です。
例えば住宅ローンを組んで団信に加入している場合、3000万円のローンのうち、残高が1500万円残っていても返済が困難になれば借金はなくなります。
しかし現金で住宅を購入してしまった場合、お金を払った人が死んでしまっても1500万円が返ってくることはありません。
また、金融機関によっては団信に加えて、三大疾病保証・全疾病保証などがついている場合もあります。
こうした保証を活用すれば、今入っている保険を見直して、月々の保険料を減らすことも可能になります。
自由に動かせる現金がなくなるリスク
現金で住宅を購入した場合、まとまった額の貯金が一気になくなることになります。これは非常にハイリスクです。
例えば急な病気や怪我でお金が必要になったり、収入が一時的に途絶えてしまったりした場合、貯金があればそれで生活できます。住宅ローンの返済も貯金でまかなえます。
一方貯金を住宅購入にあててしまっている場合、すぐに使える現金がありません。
家という財産はありますが、それで生活はできません。生活費のためには、家を手放すか、借金をするしかありません。
家を売らずに借金で乗り切る場合、住宅ローンを借りるよりも大幅に損をすることになります。
なぜなら、住宅ローンほど低金利でお金を借りられるローンは他にないからです。
住宅ローンほど金利の低いローンはめずらしい
住宅ローンの金利は、変動金利の場合0.4%台、固定金利でも1.7%ほど。
他のローンの金利を調べてまわればわかりますが、こんなにも低金利で借金できるものはそうありません。
住宅ローンの金利が低い理由にはいくつかありますが、やはり担保となる家や土地があるというのが第一でしょう。
投資物件と違って自分で済むための住宅ならば金融機関にとってのリスクも低いです。
不動産投資ローンの場合。金利は2%から5%程度です。
担保があっても投資目的となると金利は高くなります。
もっと身近なカードローンの金利はなんと18%。
無担保であり、借入額も数十万円程度と違いはあるものの、住宅ローンの十倍以上の金利が設定されています。
企業向けの融資の中には住宅ローンと同じぐらい低金利なものもありますが、一般の人が簡単に利用できるものではありません。
貯金は住宅購入ではなく資産運用にあてるべき
3000万円を35年ローン、金利1.2%で借りた場合、利息は600万円以上にもなります。
ローンを組むとそれだけコストがかかることになります。
ではここで3000万円の貯金のうち、1000万円を運用にあてた場合を考えてみましょう。
単純計算ですが1000万円を年率1%で30年運用した場合800万円以上のプラスになります。
住宅ローンの利息をカバーすることができます。
運用にあてる金額を増やしたり、利回りのいい投資先を見つけたりすればもっと利益は大きくなります。
すでに説明したように、投資用のローンは住宅ローンよりも高金利です。わざわざ借金をして投資をするよりも、住宅ローンによって浮いた貯金を投資に回した方が効率的です。
親や祖父母から援助を受けている場合は注意
現金で家を買う際、親などから援助を受けている場合は贈与税に注意が必要です。
現金一括購入は目立つため、税務署からも注目されやすくなります。
1年間にもらった金額が110万円を超える場合、贈与税が発生します。
ただし住宅の購入・増改築のための費用の場合、条件を満たせば一定額までを非課税とする仕組みがあります。
非課税枠は消費税が8%の場合、最高で1200万円まで。
消費税が10%の場合は最高3000万円までが非課税になります。
非課税にするためには、親もしくは祖父母からの贈与であること、自分で住むための住宅であることが条件になります。また、住宅の性能によって非課税枠は異なります。
現金一括購入ではなく住宅ローンを組む場合でも、親などから援助を受ける場合は非課税の条件を満たすかどうかよく確認してください。
借金は「悪」ではない
お金を借りることに良いイメージを持っていない人は多いです。
確かにギャンブルや浪費のための借金はよくありませんが、住宅ローンや自動車ローン、学資ローンなど使いみちの決まっているローンの場合、上手に使えばローンを組むことで得をすることができます。
ここまで解説してきたことからも明らかなように、住宅に関しては確実に現金で組むよりもローンを組んだ方が得です。
住宅ローンを組むと手数料や保証料・利息が発生しますが、ローンを組むことで支払ったコスト以上の利益を生み出すこともできます。
また、ローンを組むことで自由に動かせる貯金を残しておけるというのも重要なポイントです。
困った時に使えるお金がなくなってしまうのはハイリスクです。
また、団信に加入すればより万が一の際のリスクを抑えることができます。
借金というイメージに惑わされるのではなく、実際のお金の動きをシミュレーションし、どんなふうに資産を活用していくのが良いのか今一度よく考えてみましょう。
冷静になって考えてみれば、現金で購入するよりも住宅ローンを組むべきだということがわかるでしょう。