しくみ・構造

長期優良住宅申請のメリットデメリットは?固定資産税や住宅ローン控除・売却時に有利?

長期優良住宅のイメージ画像

長期優良住宅は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」によって制度化された国の認定住宅です。

良質な住宅ストックの充実を目的とされています。

つまり、売却されて中古住宅となった際にも高い性能と耐久性を維持していることが想定されるわけですね。

固定資産税や住宅ローン控除による所得税の優遇など、税制面で得するということで話題ですが、他にも良いことがたくさんあるんです。

一方で、長期優良住宅を建てるにはいくつかのデメリットもあります。

今回は長期優良住宅申請のメリットとデメリットの内容を詳しく見ていきましょう。

後半では注意点にも触れています。

1.長期優良住宅申請のメリットは?

ZEH補助金の申請イメージ画像

長期優良住宅の申請をすることで得られるメリットは以下の通りです。

①税金の優遇
②補助金(条件あり)
③フラット35の金利優遇
④一般的な家と比較した際の性能向上

順番に見ていきましょう。

①税金の優遇

長期優良住宅を建てると税金の優遇を受けることが出来るんです。

優遇される税金を順番に見てみましょう。

(1)住宅ローン控除(所得税・住民税)
(2)不動産取得税
(3)登録免許税
(4)固定資産税

(1)住宅ローン控除(所得税・住民税)

家を建てたり購入する際に住宅ローンを利用した場合、住宅ローン控除を受けられます。

「住宅ローン控除」は通称で、正式には住宅借入金等特別控除というんですよ(^^)

住宅ローン控除を受けるには、家を建てた翌年の確定申告を受ける必要があります。

その際に以下の必要書類があるんです。

  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 源泉徴収票
  • 売買契約書・請負契約書
  • 住宅ローンの年末残高証明書
  • 長期優良住宅等の認定通知書(認定住宅の場合)
  • 住宅用家屋証明書

それぞれの書類の詳細については以下の記事で紹介しています。

 
住宅ローン控除によって一般的な住宅の場合は、対象借入額4000万円を限度として10年間で最大400万円まで控除されます。

長期優良住宅の認定を受けていると対象借入額の限度額が5000万円まで増えます。

10年間で控除される額は最大で500万円です。

対象借入額限度 10年間の最大控除額
一般的な家 4000万円 400万円
長期優良住宅 5000万円 500万円

 
所得税から控除しきれない分は住民税からも控除されます。

ただし、住宅ローン控除を受けられるのは所得が3000万円以下の人だけです。

高額所得者は使えない制度なんですね。

また、住宅ローンの借入期間は10年以上という制限もあります。

繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になる場合には注意が必要です。

 

(2)不動産取得税

不動産取得税は家の購入・建築時にかかる税金です。

長期優良住宅の優遇措置としては、

  • 一般的な住宅=固定資産税評価額から1200万円控除
  • 長期優良住宅=固定資産税評価額から1300万円控除

となっています。

不動産取得税は新築時減税措置により、一戸建ての住宅はほとんどかからないと考えて良いです。

(3)登録免許税

登録免許税は、家が完成して、所有権保存登記・移転登記をする際にかかる税金です。

一般的な家の場合、家の固定資産税評価額に一定の税率を掛けたものが税額になります。

税率は、

  • 一般的な住宅=0.15%
  • 長期優良住宅=0.1%

となっています。

(4)固定資産税

固定資産税は所有する不動産等にかかる税金で、土地・建物それぞれ別にかかります。

税額は、固定資産税評価額に自治体が設定した税率をかけた額です。

税率は1.4%という標準税率が定められていて、ほとんどの自治体は1.4%を採用しています。

一般的な家を新築した場合は、当初3年間は税額が半分に軽減されます。

長期優良住宅の場合は軽減期間が5年間となり、2年間長く優遇されるんです。

  • 一般的な家の軽減期間=3年間
  • 長期優良住宅の軽減期間=5年間

②補助金(条件あり)

長期優良住宅を建てる場合、地域型住宅グリーン化事業の補助金を使うことができる可能性があります。

申請すれば絶対に使えるのではなく「可能性がある」というのは、条件があるからです。

地域型住宅グリーン化事業の補助金は、国に採択されたグループに所属している中小工務店によって建築された長期優良住宅だけが対象なんですよ。

大手ハウスメーカーで建てる場合は対象外となります。

補助金額の上限は100万円です。

申請は家の建築前に行う必要があり、時間がかなりかかります。

また、補助金には年毎に枠があるので、枠が埋まってしまうと使うことができません。

補助金を使いたい場合は、お住いの地域にある補助金対応できる工務店に相談しましょう。

近くの補助金を使える工務店は、地域型住宅グリーン化事業のホームページで検索できます。

 

③フラット35の金利優遇

長期優良住宅は、国の全期間固定金利型住宅ローン「フラット35」の金利が優遇されます。

フラット35の金利優遇タイプ「フラット35S(エス)」には、

  • 金利Aプラン=当初10年間金利マイナス0.25%
  • 金利Bプラン=当初5年間金利マイナス0.25%

というふたつのプランがあり、長期優良住宅の場合は金利Aプランを使うことができます。

金利Aプランは、設計図や家の省エネ性能を証明する数値を明確にしたデータを提出することで使うことができる、ハードルが高いプランです。

④一般的な家と比較した際の性能向上

長期優良住宅は、品確法で定められた「住宅性能表示制度」の項目のうち、以下の4項目で一定の基準を満たす必要があります。

  • (1)耐震等級
  • (2)断熱等性能等級
  • (3)劣化対策等級
  • (4)維持保全対策等級

(1)耐震等級

耐震等級は等級2または3が求められています。

耐震等級の意味は、

  • 耐震等級1=極めて稀に起こる大地震に対して倒壊しない性能を有する
  • 耐震等級2=等級1の1.25倍の性能を有する
  • 耐震等級3=等級1の1.5倍の性能を有する
  • となっていて、構造計算によって正確な数値を出して提出して評価されます。

    (2)断熱等性能等級

    長期優良住宅では断熱等性能等級4が求められています。

    断熱等性能等級には1〜4の等級があり、4が最高等級です。

    断熱・気密性能等を向上させることで、夏冬の厳しい気候でも家の中で快適に過ごせるようにすることを目的としています。

    (3)劣化対策等級

    長期優良住宅では劣化対策等級3が求められています。

    劣化対策等級は1〜3があり、3が最高等級です。

    • 外壁や土台の防腐措置
    • 浴室の防水措置
    • シロアリ対策
    • 床下高さの確保
    • 小屋裏(屋根裏)の換気措置

    等を対策することで、劣化しにくく長持ちする家にすることを目的としています。

    (4)維持保全対策等級

    長期優良住宅では、維持保全対策等級3が求められています。

    等級3は最高等級です。

    • 家の仕上げを壊さずに配管の点検清掃が行えること
    • 構造を壊さずに配管の交換補修が行えること

    を満たしている必要があります。

    具体的には、

    • 床・天井等に点検口を設け、点検や清掃が行いやすいようにする
    • 給水配管の交換がしやすいように、さや管ヘッダー方式を採用する
    • 排水管破損時に基礎を損傷せずに交換可能なスリーブ管工法を採用する

    等を対策してメンテナンス性を向上させることを目標としています。

    2.長期優良住宅申請のデメリットは?

    黒猫の人形がデメリットのカードを持っている画像

    長期優良住宅の申請によって考えられるデメリットは以下の通りです。

    ①申請費がかかる
    ②申請・認定までの時間がかかる
    ③住宅会社に経験がない場合の対応が大変
    ④家の価格が高い

    順番に見ていきましょう。

    ①申請費がかかる

    長期優良住宅の申請には設計図や構造計算書に加えて、性能を数値で明確に表した

    • 一時エネルギー消費量計算
    • 外皮計算

    等が必要となり、申請準備・書類作成にかなりの労力がかかります。

    そのため、申請には住宅会社または設計事務所の手数料を確認しておくようにしましょう。

    金額は建物の大きさや難易度によって変わりますが、大抵は10万円〜20万円の範囲内に収まるはずです。

    ②申請・認定までの時間がかかる

    長期優良住宅の申請準備から認定が降りるまでにはかなり時間がかかります。

    一般的には間取りが決まってから長期湯量住宅の申請まで10日から2週間程度ですね。

    認定が降りるまでは着工できないため、家の作りが複雑だったりすると構造計算に手間取って申請が予定より遅れた場合に、工事のスタートが遅れる可能性があるんです。

    着工が遅れると完成もスライドして遅れることが考えられるので、土地購入をしてつなぎ融資を受けている場合は、金利を余分に支払うことになる可能性もあります。

    可能であれば住宅会社と段取りを打ち合わせしながら、土地の契約がほぼ決まった段階で早め早めに図面作成等を進めるようにして、土地のつなぎ融資から着工までの期間を短くできるようにしたいところです。

    ③住宅会社に経験がない場合の対応が大変

    長期優良住宅は構造や断熱性能等に規定があるため、住宅会社に長期優良住宅の設計施工の経験がない場合には嫌がられることがあります。

    「うちは独自に長期優良住宅と同じくらいの性能で家を作っているから、認定を取る必要はない」

    などと言われて、長期優良住宅の認定を取るのをやめたという人もいるんです。

    長期優良住宅の申請に慣れた住宅会社は、地域型住宅グリーン化事業の補助金申請もおこなっていることが多く、補助金実績のある会社を選べば無難ですね。

    上でも紹介しましたが、地域型住宅グリーン化事業の補助金実績がある工務店は以下のサイトで検索できます。

    【参考サイト】
    地域型住宅グリーン化事業|補助金実績がある工務店検索
     

    大手ハウスメーカーは概ね対応してくれますが、営業所や営業マンによっては知識不足から「申請しないほうがお得」などと変なことを言われるケースもあるんです。

    長期優良住宅についてこの記事ででんなメリットがあるか覚えて、「絶対に認定を取りたい」という姿勢で住宅会社との打ち合わせに臨むようにしましょう。

    ④家の価格が高い

    長期優良住宅は構造(家の骨組みや基礎)や断熱方法が標準的な家よりも高コストになります。

    材料や施工手間の掛かりまし費用が家の値段に影響するんです。

    一般的な家と比較した場合、同じ間取りでも1割程度値段が上がります。

    ただし、最近は長期優良住宅仕様を標準にしている住宅会社も多いので、その場合は申請費が別途掛かる程度の価格アップになります。

    長期優良住宅申請費は10〜20万円程度ですね。

    長期優良住宅の申請を希望する場合は、打ち合わせが進んでからではなく、最初の段階で営業担当に伝えるようにしましょう。

    そうすれば見積もりに反映してくれるので、急な価格アップを避けられます。

    3.長期優良住宅の注意点

    チェックリストにチェックを入れる画像

    長期優良住宅を建てる際には注意が必要です。

    注意点を順番に見てみましょう。

    ①検査がないこと
    ②住宅ローン控除が10年間で終わること
    ③固定資産税の減額(半額)が5年間で終わること

    ①長期優良住宅の検査は行われない

    長期優良住宅は、書類による申請と工事完了報告が行われますが、完成後の認定検査等は行われません。

    施工前に認定が降ります。

    家の完成時に行われるのは「建築基準法の完了検査」です。

    住宅ローン「フラット35」を利用する場合は、「フラット35適合検査」が行われます。

    長期優良住宅の申請をする場合はフラット35の金利優遇を使えるため、住宅ローンはフラット35がおすすめですね。

    ②住宅ローン控除が10年間で終わること

    これは一般的な家も同じですが、住宅ローン控除で所得税が軽減される期間は10年間です。

    11年目以降は控除が終わって通常通り所得税が引かれるようになるので、年末調整や確定申告の時期には家を建ててから何年目かを確認するようにしましょう。

    ③固定資産税の減額(半額)が5年間で終わること

    長期優良住宅を建てた際の固定資産税の軽減(半額)は、5年間です。

    6年目の固定資産税はそれまでよりも増えることを確認しておくようにしましょう。

    半額になる5年間が終わり、6年目には引かれる固定資産税が2倍になるかというと、そういうわけではありません。

    固定資産税は、

    • 土地にかかる固定資産税
    • 家屋にかかる固定資産税
    • 土地にかかる都市計画税
    • 家屋にかかる都市計画税

    の合計が引かれています。

    半額になっているのはこのうちの「家屋にかかる固定資産税」のみです。

    2倍になるのはこの部分だけなので、

    固定資産税課税明細書

    または

    固定資産課税台帳

    で固定資産税評価額を確認しておくと良いです。

    固定資産税課税明細書はお住いの市町村から毎年4月頃に届きます。

    固定資産課税台帳は、役所で申請することで閲覧することができます。

    固定資産税額の計算法歩を確認しましょう。

    • 固定資産税=固定資産評価額✕1.4%
    • 都市計画税=固定資産税評価額✕0.3%

    200㎡以下の宅地の場合は土地にかかる固定資産税額が1/6に、都市計画税額は1/3に軽減されます。

    <例>

    • 土地の固定資産評価額=1,000万円
    • 家屋の固定資産評価額=1,000万円

    の場合、固定資産税額の内訳は

    • 土地にかかる固定資産税=23,333円
    • 家屋にかかる固定資産税=140,000円
    • 土地にかかる都市計画税=10,000円
    • 家屋にかかる都市計画税=30,000円
    • 合計=203,333円

    となります。

    一般的には4期に分けて引かれるので、1期あたりの金額は50,833円ですね。
     

    長期優良住宅を建てた場合は、当初5年間は家屋にかかる固定資産税が70,000円に軽減されるので、

    合計は133,333円で、1期分の金額は33,333円です。
     

    つまり、5年目の1期分の固定資産税額33,333円に対し、6年目の1期分の税額は50,833円となり、約1.53倍になるということですね。

    土地の評価額よりも家屋の評価額が高い場合は、増額割合が大きくなります。
     


     

    ヨシヒロ
    以上、今回は長期優良住宅のメリット・デメリットを紹介しました。

    長期優良住宅は、日本の家の寿命を上げて良質な中古住宅のストックを増やすことを目的としています。

    住宅業界では、今後は新築着工数は減り、リフォームが増えていくと考えられています。

    少子高齢化と人口減少が大きな要因ですね。

    少子高齢化によって将来的な子世代への負担が心配される中、良い中古住宅が購入できれば、家を新築するよりも経済的です。

    長期優良住宅を建てることが単純に家の長持ちに繋がるとは言い切れないかもしれませんが、良質な家が増えるきっかけとなっているので、より普及していくことを願っています。

    この記事でメリットとデメリットを確認し、あなたにとって最適だと判断できればぜひ長期優良住宅を建ててください。






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