マンションや一戸建てを購入する時に支払うのは建物の代金だけではありません。
各種手続きにかかる事務手数料や税金、保証料や仲介手数料など、様々な諸費用が発生します。
「諸費用」と聞くと大したことない金額のように錯覚してしまいがちですが、家のような大きな買い物にもなると諸費用だけでも数百万円にもなります。
例えば、契約を行う際には印紙税という税金が発生しますし、住宅ローンを組む際には事務手数料や保証料が必要になります。不動産の売買には仲介手数料が不可欠ですし、建物や土地の所有権が移れば登記のための費用がかかります。
しかも、こうした諸費用の多くは住宅ローンの対象外であるため、現金で準備しておく必要があります。資金計画を建てる際にこうした諸費用も含めて考えるようにしなければ、住宅ローンの返済が始まる前から資金難に苦しむことになってしまいます。
今回は、そうした間違いがおこらないよう、各種諸費用の種類と金額について簡単に解説していきます。
諸費用の目安
一般的に、物件価格に対する諸費用の目安は以下のようになるとされています。
新築マンション:物件価格の3~5%
建売住宅・中古住宅:物件価格の6~8%
諸費用1:印紙税
印紙税は、契約書に対してかかる税金です。契約金額が一定以上になると印紙税を支払う必要が発生します。支払う際は契約金額に合わせた印紙を購入し、契約書に貼って消印を押します。
納税額は契約金額と契約書の種類に応じて決まります。
住宅を購入する際の契約書には、不動産売買契約書(土地や建物の売買)、建設工事請負契約書(注文住宅を建てる時)、金銭消費貸借契約書(住宅ローンの契約)などがあります。それぞれの契約書に印紙が必要となる点には注意しましょう。
●印紙税額
不動産譲渡契約書・建設工事請負契約書
500万円超~1000万円:5000円
1000万円超~5000万円:1万円
5000万円超~1億円:3万円
1億円超~:万円
金銭消費貸借契約書
500万円超~1000万円:1万円
1000万円超~5000万円:2万円
5000万円超~1億円:6万円
1億円超~:10万円
印紙税については種類に応じて軽減措置が設けられていることがあります。契約前に必ず確認し、間違いのないように気をつけましょう。
諸費用2:住宅ローン手数料
住宅ローンを組むのにもお金がかかります。
●事務手数料
金融機関に支払う手数料です。
金額は金融機関によって様々で、都市銀行の場合数万円(+消費税)程度だったり、融資額の2%のような定率性を採用していたりします。定額制にするか定率制にするか選択できる場合もあります。
事務手数料は数十万円かかる場合もあれば数万円程度の場合もあり、商品や金融機関によってかなり違いがあります。ただ、後述する保証料とバランスを取っていたり、手数料が高い代わりに金利が低くなっていたりする場合もあるため、一概に事務手数料が安ければ得とは限りません。
●ローン保証料
保証会社に支払う保証料も必要です。これは、ローンの返済が滞った時のためのもので、万が一金融機関にお金が返せなくなった場合には保証会社が変わりに返済を行います。
保証料の支払いには一括払いと分割払いがあります。
一括払いの場合、保証料は1000万円借りるごとに数十万円かかります。
例えば、1000万円あたり20万円の保証料が必要な場合、3000万円の借り入れで60万円の保証料になります。一度に支払う金額は大きくなりますが、トータルで考えると安くなります。
分割払いの場合、住宅ローンの金利に0.2%ほど上乗せされます。一度の支払いは少なくなりますが、関西まで支払い続けることになるため、トータルで見ると一括払いよりも保証料は高く、毎月の返済負担も重くなります。例えば、3000万円を35年ローンで借りた場合、トータルで支払う保証料は120万円ほどにもなります。
●団体信用生命保険の保険料
団体信用生命保険は、住宅ローンを組んだ人が事故や病気で重い障害を負ったり死亡してしまったりした時に保険金でローンを完済するための保険です。万が一の際に残される家族のことを考えると、絶対に抑えておきたい制度です。
金利に保険料が含まれているケースが一般的で、保険料を別に支払う必要はほとんどありませんが、癌などの病気に対して疾病保証特約をつける場合は0.1~0.2%ほどの金利が上乗せされることがあります。
諸費用3:登記にかかる費用
登記とは、土地や建物の所有を公的に証明するためのものです。
土地や建物を売ったり買ったりした場合は、所定の手続きによって登記簿に記載を行います。住宅ローンを組む場合は抵当権の登記も必要になります。
住宅を購入した際には、移転登記(土地や建物を売買した場合)、保存登記(新しく建物を作った場合)、抵当権の設定登記(土地や建物を担保にお金を貸したという登記)などを行います。なお、新築でも住宅メーカーが保存登記をまず行い、その後購入者が改めて移転登記を行う場合もあります。
登記を行う場合、登録免許税という税金がかかります。
税額は固定資産の評価額を元に決まります。評価額というのは自治体によって決められる土地建物の基準価格のことで、建設費や購入費とは違うものになるため注意しましょう。評価額が決まっていない新しい建物についても法務局が評価額を決めます。
税率は以下の通りです。
土地の所有権移転登記:評価額×1.5%
中古建物の所有権移転登記:評価額×2%
新築建物の所有権保存登記;評価額×0.4%
抵当権設定登記(ローン借入):債権額×0.4%
また、登記の手続きを司法書士に依頼した場合はその費用もかかります。登記は個人で行うこともできますが、金融機関によっては司法書士が抵当権設定登記を行うように求めているところもあります。
諸費用4:不動産取得税
登記とは別に、不動産を手に入れることによって発生する税金もあります。
不動産取得税は購入時に一度だけかかる税金です。
税額は登録免許税と同じく固定資産税評価額によって決まります。
建物の場合は評価額の3%、土地の場合は評価額の半分に3%をかけた金額です。
不動産取得税の場合、土地建物それぞれに軽減措置があります。
軽減措置を受けるための条件は以下の3つ。
・移住用もしくはセカンドハウス用の住宅であること(投資目的や賃貸目的は不可)
・住宅の床面積が50㎡~240㎡であること(マンションは共有部分の床面積を按分した面積も含める)
・1982年以降に建築された、もしくは新耐震基準に適合している(する予定がある)建物であること
上記の条件を満たした場合、建物では新築なら評価額から1200万円の控除、中古住宅の場合は築年数に応じて100万円~1200万円を評価額から控除します。
土地については4万5千円か、土地1㎡あたりの評価額×1/2×住宅の床面積の2倍(200㎡まで)×3%のどちらか多い金額を軽減します。
場合によってはこれらの軽減措置によって不動産取得税がゼロになることもあります。
ただし、軽減措置を受けるためには取得日から一定日数が経過するまでに都道府県税事務所に申告する必要があります。軽減金額が大きいため、忘れずに手続きを行うようにしてください。
支払い方法については、新居に引っ越して数ヶ月で納税通知書が送られてくることになっています。
諸費用5:固定資産税と都市計画税
これまでの諸費用は家を買った際に発生するものですが、固定資産税や都市計画税については家を手放すまでずっと払い続けることになる税金です。
固定資産税もやはり固定資産税評価額をベースに決まります。
土地・建物の固定資産税は評価額の1.4%(税率は市町村によって異なる)が相場です。
土地の場合、その年の1月1日時点で家屋が建っている土地であれば軽減措置が適用されます。敷地面積200㎡までは評価額を1/6に、200㎡超かつ床面積の10倍までの広さなら評価額を1/3に軽減します。
建物の場合、住宅の床面積が50㎡~280㎡であることが軽減措置の条件です。マンションの場合は、床面積に共有部分の床面積を按分したものを含みます。新築後、一戸建てなら3年間、マンションなら5年間の間、床面積120㎡までの部分について税額を半減します。
都市計画税の場合、税額は評価額の0.3%(税率は市町村によって異なる)が相場です。土地については固定資産税と同じように軽減措置がありますが、建物の軽減措置については市町村によって異なります。
また、建物の評価額は築年数が経つについて減っていきます。評価額の見直しは3年ごとに行われます。
固定資産税も都市計画税も、その年の1月1日時点で固定資産を所有していた人に請求されます。そのため、年の途中で土地や建物を売買した場合、買い主は売り主に残りの期間分の固定資産税と都市計画税を日割りで支払うことになります。
諸費用6:仲介手数料
土地や建物の売買を不動産会社などの仲介会社を介して行った場合、仲介手数料が発生します。新築の建売住宅でも、広告などに掲載されている取引形態が売り主ではなく仲介・媒介と書かれている場合は仲介手数料がかかります。
仲介手数料は物件価格に応じて決まります。
物件価格が400万円以上の場合、物件価格(税抜)の3%+6万円が上限です。ただし、これは上限であるため、これよりも低い仲介手数料に設定されている場合もあります。
また、個人が売り主の場合は消費税がかからないため表示されている物件価格そのままから計算できますが、不動産会社などが販売している物件には消費税がかかっているため税抜価格から計算する必要があります。更に、仲介手数料そのものにも消費税がかかります。
実際の仲介手数料がいくらになるのかは、物件価格だけを見ても分かりません。購入前に直接確認するのが一番です。
その他の諸費用
●解体工事費
建設予定地に古い家屋が建っている場合解体費用がかかります。解体費用は広さや家の構造によって異なり、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が高くなります。
●地盤調査費
注文住宅を建てる場合に必要になります。費用は10万円前後。
その土地が建物をつくるのに十分な強度があるか確認するための費用です。
●地盤改良工事
地盤調査によって土地の強度が不足している分かった場合、改良工事を行います。費用は広さや工事内容によって様々ですが、数百万円以上の費用がかかる場合もあります。
●地鎮祭・上棟式費用
注文住宅の場合、建設前の更地の状態で行う地鎮祭、建物の骨組みが出来上がってから行う上棟式にも費用がかかります。地域や人によっては行わないこともありますが、行う場合はそれぞれ10万円ほどかかります。
●水道負担金
注文住宅や建売住宅で、水道が通っていない土地に新たに住宅を建てた場合に水道管を設置するための費用です。費用は数十万円ほど。自治体に支払う費用です。
●設計管理費
注文住宅で建築士に設計を依頼した場合、工事代金の10%ほどの設計管理費がかかるケースがあります。
●修繕積立基金
新築マンションの場合必要になります。
マンションでは共用部分の大規模修繕工事を行うための費用をあらかじめ積み立てておき、将来に備えています。金額は数十万円ほどですが、物件や専有面積によって異なります。同じマンション内なら広い部屋ほど積立基金は高くなります。
修繕積立基金は、修繕積立金とは異なります。修繕積立金は中古・新築を問わず毎月支払う必要があります。こちらも共用部分の大規模修繕に備えた積立金です。
諸費用はどのくらいかかる?
例えば、土地価格1500万円、建設費2500万円、土地面積90㎡、建物面積100㎡の場合は以下のように
なります。
ただし、住宅ローンの借入額は3500万円、返済期間は35年、事務手数料は3万3千円、保証料は一括払いとします。
印紙代:4万円
登記費用:31.12万円
住宅ローン借り入れのための費用:73.3万円
土地の仲介手数料:56.1万円
地盤調査費:10万円
地鎮祭・上棟式費用:20万円
合計194.52万円
こうした費用以外にも、引っ越し代や新しい住まいに合わせた家具や家電の購入費用、古い家財の処分費用などがかかります。
戸建の場合は庭などの外構部分の整備にかかる費用なども発生します。
いずれも住宅ローンではカバーできず、貯金の中から支払っていくことになります。住宅購入にかける予算について考える際には、こうした諸費用のことも忘れずに計画を立てていく必要があります。