注文住宅を建てるには住宅会社を選ぶ必要があります。
住宅会社には大きく分けて
- ハウスメーカー
- 工務店
があります。
両者は似ていますが、家づくりに対するアプローチがかなり違うんです。
どっちがいいのか、よく調べてみないと分からないですよね。
そこで今回は、自分にとって注文住宅を建てる業者はハウスメーカーと工務店はどっちがいいのかを知るための参考となるように、両者の特徴の違いや価格差を紹介します。
1.ハウスメーカーと工務店の注文住宅の特徴を比較
ハウスメーカーと工務店の注文住宅の特徴を、以下の項目に分けけて比較します。
①間取りやデザインの自由度
②施工精度
③工事の期間
④アフターメンテナンス体制
①ハウスメーカーの特徴
ハウスメーカーの注文住宅の特徴を見ていきましょう。
1)間取りやデザインの自由度は?
ハウスメーカーの注文住宅は、間取りやデザインの自由度が低いと考えられます。
ハウスメーカーの注文住宅は「企画プラン」と呼ばれるあらかじめ用意された間取りから自分に合うものを選択し、それをアレンジしていくのが一般的なんです。
ドアや床板などの仕上げの色・柄を決められた選択肢の中から選んでいきます。
壁の位置などの変更は基本的にできないと考えた方が良いでしょう。
企画プランからの大幅な変更には別途変更料などの料金がかかることがほとんどです。
2)施工精度は?
ハウスメーカーの注文住宅は、施工方法が商品ごとに決められおり、施工するのは施工方法を熟知した下請け業者です。
下請け業者の職人は定期的に講習等を受けて常に技術向上に努める必要があるため、施工精度は高いと考えられます。
職人が設計図通りに施工しているかどうかを管理するのはハウスメーカーの現場監督です。
現場監督は、工事の誤りがあれば指摘して、職人に工事のやり直しを命じることもあります。
ハウスメーカーの管理体制は工務店よりも厳しく、施工精度をより高めていると言えますね。
3)工事の期間は?
工事の期間(工期)は、あらかじめ定められた工事スケジュールによって決められており、総じて工務店の設定する工期よりも短いです。
工期が短い理由は、ハウスメーカーが自社の経営方針によって設定した年間に施工すべき棟数を達成するためです。
要はたくさん家を建てるためですね。
4)アフターメンテナンスは万全?
ハウスメーカーのアフターメンテナンスは、あらかじめ完成後何年でどんなメンテナンスをするかが定められています。
推奨される補修等のメンテナンスを受けることで、家を長持ちさせるという考え方ですね。
外壁の塗装やベランダや屋上の防水の交換工事など、ランニングコストがある程度最初の段階で分かるため、それに応じた資金を蓄えていく必要があります。
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②工務店の特徴
目次
工務店の注文住宅の特徴を見ていきましょう。
1)間取りやデザインの自由度は?
工務店の注文住宅は、お客さんの希望や土地に合わせてゼロから設計していく方法で建てられます。
そのため、間取りやデザインの自由度は高いですね。
ただし建物の構造上、ある程度の制限はあるので、お客さんが好きなように形を決められるわけではありません。
お客さんは打ち合わせで希望を伝え、それに近い形で建築士等の専門家が図面を仕上げます。
次回の打ち合わせ時にその図面を見ながら微調整していくんです。
打ち合わせの回数や頻度は決まっておらず、施主が納得するまで何度でも修正・変更できることが工務店の特徴と言えますね。
多くの場合、建築確認申請の前であれば変更が可能です。
2)施工精度は?
最近はハウスメーカーと同様に、工務店も自社の施工方法をある程度標準化していることが多いです。
施工するのは「協力会」という自社独自の下請け業者グループに登録した業者です。
工務店の社員である現場監督が下請け業者の施工管理をします。
工務店と工務店の下請け業者は付き合いが長いことが多く、そのため信頼関係が深いです。
一方で、関係が緩いために厳しい工事管理が行き届かないこともあると考えられますね。
お客さんも頻繁に工事現場に足を運び、一緒に家を作っている仲間という意識を持つと良いです。
3)工事の期間は?
工務店の注文住宅の工期は、ある程度ゆとりを持って設定されることが多いです。
そのため工期はハウスメーカーに比べて長いと言えますね。
しかし、どうしても都合で何月何日までに完成させてほしいという要望がある場合、相談すれば調整してくれるはずですよ。
4)アフターメンテナンスは万全?
工務店のアフターメンテナンスは、基本的には不具合が出てきた段階でその都度対応してくれます。
外壁の塗装に関しては、あらかじめ何年後に塗り替えるなどと決まってはおらず、実際の壁の状態をみて「そろそろ塗った方がいいですよ」という感じで提案されるんです。
そして、できるだけお金がかからないメンテナンスを考えてくれるので良心的だと言えますね。
ハウスメーカーとはメンテナンスの捉え方が異なりますが、対応に関しては負けていないと考えられます。
2.ハウスメーカーと工務店の価格の違いは?
目次
- 1.ハウスメーカーと工務店の注文住宅の特徴を比較
- 2.ハウスメーカーと工務店の価格の違いは?
- 3.ハウスメーカーと工務店はどっちがいい?
注文住宅の価格は使う材料や家の大きさによって変わります。
ある程度の目安としては「坪単価」を使うことが多いです。
坪単価の詳細は以下の記事で触れています。
ハウスメーカーと工務店の坪単価は概ね以下のようになります。
- ハウスメーカーの注文住宅の価格=70万円〜100万円程度
- 工務店の注文住宅の価格=45万円〜65万円程度
両者には大きな価格差があることがわかりますね。
これからこの価格差が生じる要因を以下の5つの項目に分けて見ていきましょう。
①材料の違いによる価格差
ハウスメーカーの家は、商品ラインナップごとに使う材料の種類を定めていることが一般的です。
会社や商品のコンセプトに合った材料が決められているんですね。
例えば外壁材で見てみると、ハウスメーカーは重厚感があって長持ちする「レンガタイル」を標準仕様とすることがあります。
↓レンガタイルの外壁
一方、工務店はお客さんの予算に応じて、「窯業系サイディング」等の安い素材を提案するのが一般的です。
↓レンガタイルを模した窯業系サイディングの画像
「レンガタイル」よりも、「窯業系サイディング」の方が材料の価格がかなり安いため、価格差が生じます。
外壁だけでなく、構造材や仕上げ材全てにおいて同じことが言えるので、標準材料の違いによる価格差はかなり大きいと考えられますね。
②企業規模の違いによる価格差
一般的にハウスメーカーは大企業、工務店は零細企業に分類されます。
ハウスメーカーは従業員数が多く本社が東京などの都市部に位置していることから、人件費やビルの家賃など会社維持のための固定費が膨大です。
↓大手ハウスメーカー・大和ハウスの本社ビル
膨大な経費を賄うために必要な利益・工事件数を試算し、できるだけ多くのお金を確保しておく必要があります。
一軒の家を建てる工事で生じる損害は全体に対しては小さなものですが、工事件数が増えれば積み重なって大きくなりますよね。
そのため、家の価格を高く設定しておく必要があるわけです。
一方の工務店は従業員数が1〜10人程度であることが多く、年間に建てる家の数もある程度限られています。
↓一般的な小規模工務店の事務所
私が以前勤務したことのある工務店では、従業員6人に対して年間の工事件数は10〜15棟でした。
企業規模が小さいことから、工務店が会社を維持するために必要なお金はハウスメーカーに比べて計算しやすく、資金を確保するのも比較的楽だと考えられますね。
③営業経費の違いによる価格差
ハウスメーカーは全国各地に無数のモデルハウスを建設し、テレビCMや新聞広告などの大掛かりな宣伝をして集客しています。
また、来場者に対するサービスも手厚くしており、営業にかかる経費が膨大です。
本社社員が全国の営業所に出向くことも多く、常に多額のお金が必要なんですよね。
それに対して工務店はモデルハウスや広告宣伝にお金をかけず、営業方法が地域に密着した活動に限られているため、比較的営業経費は少ないと考えられます。
↓工務店の現場監督は小回りの効く軽ワゴン車を使用する事が多い
そうした営業経費の違いは、家の価格差に最も影響していると言われているんです。
④メンテナンス費の違いによる価格差
ハウスメーカーのメンテナンスは、家を長持ちさせるために必要な補修等をあらかじめ設定していることが多いです。
例えば、外壁と外壁のつなぎ目(目地)に施工するシーリングがまだあまり劣化していなくても、時期が来れば交換するといった具合に、過剰と思われるようなメンテナンスとなるケースがあります。
一方の工務店のメンテナンスはお金の面で良心的で、家の持ちに影響しない程度にできるだけ安く工事できるように提案してくれます。
目地シーリングに関しては、劣化具合によっては交換せずに、塗装のみでOKだったり、目地が劣化するまで塗装しないようにするという具合に融通をきかせてくれるんです。
こうしたメンテナンス費の違いによる価格差(ランニングコストの差)がありますね。
⑤経営方針の違いによる価格差
ハウスメーカーは、常に経済的な成長を求められています。
経営戦略も成長を前提としたものとなり、成長に必要な利益は年々増大するんです。
利益確保に必要な工事件数は自然と増え、目標達成のための人員を増やしたり個々の従業員の負担も増えていきます。
会社の成長や従業員の個別の貢献度に応じて給与も増大していくという流れが考えられますね。
成長によってより大きな利益確保が必要となり、家の価格も高く設定しておくことが大事になってきます。
一方、工務店は会社の成長よりも、安定して必要最小限の受注が取れることを重視している会社が多いです。
家を建てたお客さん(OB客)が困らないよう時々訪問しながら常に丁寧に対応し、お客さんからの紹介による受注が繋がっていくというのが基本になりますね。
価格もきちんと予算内に収めるようにしてくれるので、お金の面で安心して家造りができます。
経営方針の違いは、価格差だけでなく基本的な顧客対応に大きく違いが出てくると考えられますね。
3.ハウスメーカーと工務店はどっちがいい?
目次
- 1.ハウスメーカーと工務店の注文住宅の特徴を比較
- 2.ハウスメーカーと工務店の価格の違いは?
- 3.ハウスメーカーと工務店はどっちがいい?
ハウスメーカーと工務店は、一概にどっちがいいとは言えません。
あなたがどんな家が欲しいか、によります。
①ハウスメーカーの方がいい場合
ハウスメーカーの注文住宅の方が向いているのは、
- 車や家電のように価格や仕様がはっきりしている家がいい
- 購入後はあまり訪問してほしくない
- 将来的な運用(売る・貸す)を考えている
- 知名度によるステータスが欲しい
という気持ちがある場合です。
価格や仕様がはっきりしているのは、商品が規格化されているハウスメーカーです。
カタログ類も見やすく、取り寄せるだけでイメージが湧き、楽しいですよね。
多少のアレンジや変更がありますが、ほぼイメージ通りの家ができやすいと考えられます。
ハウスメーカーは担当者の異動が多く、特に営業マンは1〜3年で転勤になることがあります。
そのため、お客さんと会社との関係性は工務店のそれと比べて薄いんです。
あまりディープな関係を作りたくない場合は工務店よりハウスメーカーを選ぶほうが良いでしょう。
また、ハウスメーカーによっては、自社施工の家を買い取るサービスがあります。
一般の不動産業者に売るよりも査定額が高いことも。
家を良い状態で維持して、高く売りたい場合はハウスメーカーのメンテナンスプログラムを取り入れると良いでしょう。
▶ ヘーベルハウスのメンテナンスの価格は?メンテナンスプログラムについても
ブランド志向が強かったり、有名企業で建てたというステータスを求める場合はハウスメーカーを選ぶのが無難ですね。
②工務店の方がいい場合
工務店の注文住宅のほうが向いているのは、
- 自分で間取りを考えたい
- 一緒に家造りをして、住んでからも頻繁に来訪して欲しい
という気持ちがある場合です。
間取りを自分で考えると、自分の家のことを把握でき勉強になります。
また、愛着も湧いてメンテナンスを積極的にしたくなると言われているんですよ。
結果、家が長持ちすることに繋がるわけですね。
家は住んでからの方が大事です。
工務店は毎年同じ担当者が必ず最低一度は訪問して様子を見てくれます。
近頃は親戚も数年間音沙汰ないことも珍しくないですから、10年後には親戚以上の間柄になるほど親しくなってきます。
長い目で見ると、他の会社に家の建築を依頼するなんて考えられないと思えるんじゃないでしょうか(^^)
目次 ~この記事に書かれていたこと~
注文住宅を検討し始めた段階では、まだ自分がどんな会社に建築を依頼すべきかわからないですよね。
家づくりはお互いに信頼し合うことが大切になります。
会社を選ぶ前に、実際に複数の会社の担当者や社長に会って話をするようにしてください。
話をするのはサラッとではなく、真剣に全力で話をすることをおすすめします。
それぞれの会社の特徴をよく見て、自分に合った業態の会社に依頼するようにしましょう。