壁紙の色や床の色は部屋のインテリアを考える上で重要なポイントになります。
理想の部屋を実現するために、壁紙の質感やフローリングの素材にこだわる人は多いです。
部屋の内装を決める際、壁紙や床材以外に考えておいて欲しいのが「巾木」についてです。
巾木は比較的小さなパーツではありますが、部屋の印象を大きく左右します。
今回は巾木の役割と重要性、主な種類や上手な選び方について解説します。
巾木(はばぎ)とは?
巾木といわれてもどんなモノかパッと思い浮かばない人も多いかもしれません。
巾木とは、壁と床の接するところに使用される細長い板のことです。「幅木」と書くこともあります。
今住んでいる部屋が洋室なら、部屋を見回してみましょう。
壁と床の境界に巾木があるはずです。
部屋の内装を決める時に、壁紙の素材や質感・機能、床材の色にはこだわっても、巾木にこだわるという人は多くありません。
いわれて初めて存在に気がつき、「こんなところも自分で決められるのか」と気がついた人も多いでしょう。
存在感が薄いように思える巾木ですが、巾木には重要な役割があります。また、小さくても部屋全体に使用することになるため、見た目への影響も大きいです。
巾木がある理由
一見単なる飾りに見える巾木ですが、建物を使用する上で重要な仕事をしています。
●壁を守る
まず、巾木は壁を守るのに役立ちます。
たった数センチの高さしかありませんが、これがあるのとないのでは全く違います。
継ぎ目というのは、力がかかったり経年劣化で隙間が大きくなったりしやすい場所です。
これは、壁と床の継ぎ目でも同じです。ここに巾木を使い強度を高めることで、壁の割れや歪みを防止します。
小さな子どもがいて壁を蹴ったりぶつかったりする可能性があるなら、巾木があった方が安心です。
また、壁の下の方は汚れや傷がつきやすい部分です。掃除機が壁にぶつかると壁紙が汚れたり傷ついたりする原因になりますが、巾木があれば防止できます。床に液体をこぼしてしまった際も、巾木があれば壁紙への被害を軽減できます。
多くの場合、巾木はビニール製のものが使用されているため、壁紙よりも掃除が簡単です。
●壁と床の隙間を塞ぐ
普通、壁と床の間には多少の隙間を残しておきます。
隙間があれば、風や地震、積雪の重みなどで建物多少が歪んでしまっても、壁と床がぶつかってしまうことがありません。多少の力がかかっても壁や床を守ることができます。
ただ、隙間を開けたままにしていると住むのには不便です。ゴミが溜まったり、虫の侵入経路になってしまったりする原因になります。空気の通り道にもなるので、冷暖房効率も落ちてしまいます。
そこで必要になるのが巾木です。壁と床の間に空間を確保しつつ、隙間をカバーすることができます。
また、壁と床の間に余裕を持っておくことは壁を保護するだけでなく、建築工事にも都合が良いです。
いくら正確な設計をしていても、大きなものを作るとなるとぴったり隙間なく建てるのには高度な技術が必要になります。多少のあそびを残しておいた方が工事をすすめやすく、柔軟性も高いです。
巾木の種類
巾木は実用性のあるパーツではありますが、同時に部屋の見た目を左右するものでもあります。
高さは低いものの、部屋全体に設置することになるため、思っている以上に巾木選びがインテリアに影響します。
間違った選び方をしてしまうと悪目立ちしてしまうので注意が必要です。
●素材
巾木にはビニール製のもの、木製のもの、アルミ製のものがあります。
最も一般的なのがビニール製のものです。マンションやアパートの洋室に使われているものはほとんどこのタイプのものです。色のバリエーションが豊富で掃除もしやすく、値段も安価です。
次に多いのが木製のものです。ビニール製のものに比べるとやや高価ですが、木の風合いや温かみを感じられます。見た目の印象が優しく、木の雰囲気にこだわった家づくりをするなら木製です。
最後にアルミ製のもの。3つの中で最も高価ではありますが、耐久性が高く汚れにも強いです。アルミ製の巾木はビニール製や木製のものに比べて高さを抑えたものが多く、目立ちにくくスッキリ見えるというメリットもあります。
●色
壁紙や床の色と合わせて様々な色の巾木があります。
一般的には、壁紙や床の色に近い巾木が選ばれます。アルミ製の巾木の場合、色は金属色となりますが、壁紙の白と馴染むため、濃い色の壁紙にしない限りは目立ちません。
●高さ
巾木の高さも変えることができます。
カントリー調の部屋やナチュラルな雰囲気の部屋を目指すなら、巾木を高くするのがおすすめです。スタイリッシュな雰囲気にしたい場合や、スッキリ見せたい場合は低いタイプのものを選びましょう。
巾木の選び方
基本的に、壁か床に馴染み、目立たないものを選びましょう。壁と床の境界線が目立ってしまうと部屋の雰囲気がごちゃごちゃして見えます。
●色
壁か床に合わせましょう。
壁に合わせて白っぽい色にすれば巾木が目立たず、部屋も広くスッキリして見えます。ただし汚れには弱くなってしまうため、どちらが良いかよく考えてから決めましょう。
●高さ
部屋のテイストに合わせて決めます。
スタイリッシュなん雰囲気や広く見せたい場合は低い巾木がおすすめです。しかし、高さがなくなればその分だけ巾木でカバーされる面積は少なくなります。汚れだけでなく、傷などにも注意が必要です。
掃除機をぶつけてしまいそうだという人や、小さな子どもやペットのいる家庭の場合は、ある程度の高さを確保しておいた方が安心です。
もしギリギリまで巾木を低くして目立たなくしたいと考えているのなら、アルミ製のものが丈夫で目立たずおすすめです。
巾木を使わない方法
巾木は壁を保護し、壁と床の間の隙間を埋めるために必要なものです。しかし「どうしても巾木が出っ張っているのが気になる!」という場合は他の方法もあります。
●入り巾木
巾木は普通室内側に出っ張るようにして設置しますが、入り巾木の場合は凹むようにして設置します。壁の下側になるため、壁の下が凹んでいるのはほとんど目立ちません。
ただし。工事が普通の巾木に比べて難しいという欠点があります。
●アルミアングル
アルミアングルはL字型の金具です。巾木の代わりに使用する場合は逆さにし、上に壁を乗せるようにして使用します。
アルミアングルによって壁と床の間の隙間が埋まるため、空気の出入りやホコリの侵入を防ぐことができます。室内に出っ張る普通の巾木と違い、存在がわからないほど目立ちません。
ただし、アルミアングルを採用には注意が必要です。
まずは価格。普通の巾木よりもお金がかかります。部品自体もそうですが、工事コストも高いです。あそびがなくなるため工事の難易度も上がり、より精密な施工が求められます。
施工経験のあまりない業者もいるため、お金を払ってでもアルミアングルを使いたいと考えていても、業者によっては断られてしまう可能性もあります。
●巾木をなくす
どうしても巾木が目立つのが嫌だという場合は、なくしてしまうのも選択肢の一つではあります。
しかしすでに説明した通り、巾木は単なるデザインの一つではなく、理由があって使われているものです。
巾木がない場合は、壁に力をかけたり汚したりしないように慎重に生活する必要があります。掃除機をかける際も、できるだけぶつけないようにしなければなりません。巾木のない状態で壁に力をかけると傷になるだけでなく、接合部分が痛む原因にもなります。大人だけの家庭であれば大丈夫かもしれませんが、子どもやペットの居る家庭では巾木なしは難しいです。
また、フローリングの場合、定期的にワックスを塗り直す必要がありますが、ワックスが壁紙につくと済になってしまいます。巾木がない場合は、壁紙をマスキングしなければなりません。
壁の下にある隙間をなくしてしまうことになるため、工事の難易度が上がり、工事費用がかさむ可能性もあります。
巾木をなくしてしまえば部屋の見た目はスッキリ見えるかもしれませんが、一方で建築費用やメンテナンスコストが上がってしまう可能性があります。見た目にこだわることも大切ですが、長期的な視点で考え、本当に巾木をなくしてしまわなければならないのかよく考える必要があるでしょう。
巾木の上手な選び方
小さいけれど部屋に与える影響の大きい巾木。どんなふうに選べば失敗せずにすむのでしょうか。
大原則は、先ほど説明した通り、壁か床の色に合わせること。どちらかの延長のように見せかけることで巾木の存在感を抑え、自然な見た目にすることができます。アルミ製のものを使用する場合は、壁紙は薄い色のものを選びましょう。壁の色も床の色も濃いという場合は、アルミ製の巾木を使ってしまうと悪目立ちしてしまいます。
高さや素材は部屋のテイストに合わせて選びます。ナチュラル系やカントリー調のインテリアにするなら、木製で幅のあるものを選ぶと馴染みます。おしゃれな雰囲気やスッキリした雰囲気にしたいのであれば、巾木を低くして極力目立たないようにするのがおすすめです。
巾木をなくして家を建てることも可能ですが、壁の保護ができなくなってしまうなどのデメリットが大きいです。入り巾木やアルミアングルを使えば目立たない施工もできるため、巾木なしは最後の手段と考えておいてください。
巾木こだわろうと思えばとことんこだわることもできますが、本当にそこにお金や時間をかけるべきかどうか考えてみることも大切です。
部屋の印象を左右するとはいえ、壁紙や床材の影響力には及びません。機能性の差も大きくないため、巾木にこだわるよりも床材や壁紙にこだわった方が有意義なケースもあります。
巾木にかかわらず、どこにこだわりどこにお金をかけるべきなのか時々立ち止まって考えることは、家づくりにおいて非常に重要です。
巾木も大切な存在
普段意識することのない「巾木」ですが、部屋の印象を左右し、建物を守る重要な役割を果たしています。
部屋の内装を決めるとなると。壁紙や床材、建具のことばかり考えてしまいがちですが、巾木についても一度考えてみてはどうでしょうか。
一口に巾木といっても、いろいろな種類があります。
カタログやサンプルを見比べ、どんなものが部屋に馴染むかよく比較してみましょう。