ハウスメーカーをはじめ住宅会社にとって断熱は永遠の課題です。
住む側の私たちにとっても断熱は大事ですよね。
いくら間取りやデザインが素晴らしい家でも、エアコンが全然効かなかったり、最初は快適だったのに徐々に家の性能が落ちていくなんていうことになったら悲しいです。
家を建てるなら最低限、断熱性能は高くしておきたいのではないでしょうか。
家の断熱性能は主に窓などの開口部の性能と、外壁・屋根・床の断熱材(と施工法)によって変わってきます。
今回は、断熱材に絞って見ていきましょう。
大手ハウスメーカーの断熱材を比較していきます。
また、断熱材はただ入れれば良いというわけではなく、壁や天井・床で最適な素材や厚みが違ってきます。その辺りも後半で触れていきますね。
1.ハウスメーカーの断熱材比較
ハウスメーカーによって使っている断熱材が違うんです。
自社開発のメーカーもあれば、既製品を使用するところもありますね。
断熱材は素材や密度にたくさんの種類があり、性能は千差万別です。
そこで大手ハウスメーカーの標準仕様で使用している断熱材を比較して見ましょう。
今回調査するのは以下のハウスメーカーです。
①積水ハウスの断熱材
積水ハウスの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=グラスウール10k(厚み100mm)
屋根=ロックウール(厚み300mm)
床=ポリスチレンフォーム(厚み80mm)
積水ハウスは壁の断熱材にグラスウールを使用しています。
屋根の断熱材にはロックウールを使用していますね。
グラスウールとロックウールは素材の特徴や性能がよく似ています。
違いは原料と生成の仕方ですね。
グラスウールは廃品ガラスを再利用して熱処理し、細かく繊維状にしたものです。
色は薄い黄色かピンク、あるいは白ですね。
↓グラスウール
ロックウールは岩から鉄などの金属を作る際に炉の中に残るスラグ(カス)を利用したものになります。
色はグレーや茶色です。
↓ロックウール
壁と屋根で両者を使い分ける理由は、性能と仕入れコストのバランスだと考えられます。
一般的にはロックウールの方がやや値段が高いと言われていますね。
②セキスイハイムの断熱材
セキスイハイムの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=グラスウール16k(厚み100mm)
屋根=グラスウール16k(厚み140mm
床=ポリスチレンフォーム(厚み110mm)
積水ハウスと比べると屋根の断熱材がやや薄い印象がありますが、グラスウールが16kと高密度なのが特徴ですね。
この辺りはメーカーごとにの性能とコストのバランスの違いが現れています。
セキスイハイムはユニットを工場で作って現場に運ぶ方式です。
断熱材も工場で施行されるので、隅々までぴったりと断熱材が入れられています。
③大和ハウスの断熱材
大和ハウスの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=グラスウール14k(厚み100mm)
屋根=グラスウール16k(厚み140mm)
床=グラスウール14k(厚み80mm)
大和ハウスは床下の断熱材にグラスウールを使用していますね。
グラスウールは湿気に弱い素材です。
施工ミスがあると中に湿気が入ってしまってカビたり、水分の重さで外れてしまったりするんですよ。
大和ハウスの床下は通気工法といい、外気を取り入れて換気する方式です。
湿度の厳重な管理はされていません。
雨の日などは床下に湿気がたまりやすいですから、断熱材の防湿対策が厳重にされ流必要があります。
下の画像では、カットされたグラスウールの切断面は繊維がむき出しになっていますね。
これはまだ施行途中のためこの後防湿フィルム等によって密閉されるものと思われます。
一般的に床下に使われるポリスチレンフォームはグラスウールよりもかなり高価ですから、コストを抑える目的で床下にグラスウールを使っていると考えられますね。
④住友林業の断熱材
住友林業の各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=グラスウール16k(厚み105mm)
屋根=セルロースファイバー25k(厚み230mm)
床=ポリスチレンフォーム(厚み110mm)
住友林業は主力商品のBF構法シリーズにおいて、
- 北海道
- 青森県
- 岩手県
- 秋田県
では屋根(天井)断熱にセリウロースファイバーを標準にしています。
セルロースファイバーは断熱材の中で最も燃えにくい素材です。
また、調湿や防虫の機能もあると言われていますね。
断熱性能自体はグラスウールやロックウールと同等です。
上記の地域以外では、グラスウール16kの220mmを採用しています。
⑤三井ホームの断熱材
三井ホームの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=ロックウール(厚み140mm)
屋根=DSパネル(厚み152mm)
床=ポリスチレンフォーム(厚み80mm)
三井ホームが屋根に使用しているDSパネルは、ポリスチレンフォームを構造用合板で挟んだものです。
構造材と断熱材が一緒になった材料で、施工の効率化が計られています。
⑥トヨタホームの断熱材
トヨタホームの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=グラスウール16k(厚み100mm)
屋根=グラスウール16k(厚み150mm)
床=硬質ウレタンフォーム(厚み35mm)
トヨタホームの床下に使われている断熱材は硬質ウレタンフォームです。
ウレタンというと吹き付け施工が多いですが、床下に施工する場合は板状のウレタンフォームをはめ込むのが一般的です。
ポリスチレンよりも繊維が細かく、加工しやすいという特徴があります。
端材を利用しやすいため無駄が少ないですね。
⑦ミサワホームの断熱材
ミサワホームの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=グラスウール16k(厚み90mm)
屋根=ロックウール(厚み200mm)
床=グラスウール16k(厚み90mm)
ミサワホームは大和ハウスと同様に、床下にグラスウールを使用していますね。
防湿の処理は、工場での床パネル作成時に密閉するのでほぼ完璧です。
現場作業ではないため、作業員も無理な姿勢で行うことがないことから、精度が高いパネルが出来上がります。
⑧ヘーベルハウスの断熱材
ヘーベルハウスの各部分の断熱材種類と厚みは以下の通りです。
壁=ネオマフォーム(厚み45mm)
天井=ネオマフォーム(厚み65mm)
+ポリスチレンフォーム(厚み25mm)
床=ポリスチレンフォーム(厚み60mm)
ヘーベルハウスは外壁にへーベル板(ALCパネル)を使っています。
ヘーベル板は気泡コンクリートという軽い鉄筋コンクリートの素材でできていて、中に空気の泡がたくさんあるため一般的な外壁材と比べて熱抵抗が高い外壁となっています。
ただし、断熱材と比較するとそこまで断熱性に優位に働くようなことはないですね。
後半で大手ハウスメーカーの断熱材比較を一覧表にまとめていますので、後で確認していただければと思います。
2.住宅の壁・天井・床の最適な断熱材の種類と厚み
- 1.ハウスメーカーの断熱材比較
- 2.住宅の壁・天井・床の最適な断熱材の種類と厚み
- 3.ハウスメーカーの断熱材(壁・天井・床)を一覧表で確認
夏場と冬場では家の快適性に影響する熱の種類が違うんですよ。
夏場、直射日光を受ける屋根の表面温度は、80度以上になることもあります。
そうした火傷するほどの高温を防ぐにはグラスウール等の繊維系の断熱材が有効です。
キッチン用品の「鍋つかみ」はミトンやウールなどの繊維系の素材が布の中に入っています。
西日や朝日をもろに受ける外壁に関しても、かなりの高温になるので繊維系の断熱材が最適です。
厚みに関しては、温度の高い屋根面を厚くします。
逆に冬場は、室内の熱が床下に逃げないことが大切です。
高温を防ぐというよりは、「保温する」感覚に近いですね。
冬場のフローリングが冷たいのは誰もが経験したことがあると思いますが、あれは室内の暖かい空気が床下に逃げていると考えられます。
そのため、床下に保温材を設置して熱が逃げないようにしたいですよね。
密閉したいところです。
熱が逃げないように密閉するには、繊維系の断熱材よりもポリスチレンフォームが良いです。
いわゆる発泡スチロールですね。
厚みは60〜80mm程度のものが多く使われます。
しかし、断熱材は常に新しい技術が開発されており、たくさんの種類が存在します。
- 吹き付け発泡ウレタン断熱材
- アルミシート遮熱材
- セルロースファイバー
など、素材や形状・施工方法も多種多様です。
グラスウールとポリスチレンフォームの組み合わせが一般的ですが、各社工夫してオプションやグレードによっていろんな断熱方法を提供していますね。
断熱方法を選択できる場合は、打ち合わせの際に営業マンや設計者にどんなメリットやデメリットがあるのかを確認して決めるようにしましょう。
3.ハウスメーカーの断熱材(壁・天井・床)を一覧表で確認
- 1.ハウスメーカーの断熱材比較
- 2.住宅の壁・天井・床の最適な断熱材の種類と厚み
- 3.ハウスメーカーの断熱材(壁・天井・床)を一覧表で確認
大手ハウスメーカーが壁・屋根・床に使用する断熱材の種類と厚みを一覧表で確認してみましょう。
Gウール=グラスウール
Rウール=ロックウール
Fフォーム=フェノールフォーム
Nフォーム=ネオマフォーム
Sファイバー=セルロースファイバー
Pスチレン=ポリスチレンフォーム
Kウレタン=硬質ウレタンフォーム
数字+k=密度の単位(kg/㎥)
Gウール10k 厚み100mm |
Rウール 厚み300mm |
Pスチレン 厚み80mm |
Gウール16k 厚み100mm |
Gウール16k 厚み140mm |
Pスチレン 厚み110mm |
Gウール14k 厚み120mm |
Gウール14k 厚み310mm |
Gウール14k 厚み80mm |
Gウール16k 厚み105mm + Fフォーム 厚み20mm |
Sファイバー25k 厚み230mm |
Pスチレン 厚み100mm |
Rウール 厚み140mm |
DSパネル 厚み6インチ |
Pスチレン 厚み80mm |
Gウール16k 厚み100mm |
Gウール16k 厚み150mm |
Kウレタン 厚み35mm |
Gウール16k 厚み90mm |
Rウール 厚み200mm |
Gウール16k 厚み90mm |
Nフォーム 厚み45mm |
Nフォーム 厚み65mm + Pスチレン 厚み25mm |
Pスチレン 厚み60mm |
ここで紹介しているハウスメーカーの断熱材は標準仕様のものです。
オプションや上級グレードなどにおいては別の断熱材が使われることがあるので、目安として参考にしていただければと思います。
各社標準仕様では性能とコストのバランスが取れた組み合わせの断熱材を使っています。
ハウスメーカーは、それぞれ断熱こだわりをもっており、採用している断熱方法を否定することもありますが、基本的な考え方は共通しているんです。
断熱材は、「断熱」が基本的役割ですが、それぞれ付加価値が違います。
グラスウール=値段が安い
ポリスチレンフォーム=密閉性がある
吹付けウレタンフォーム=追従性・劣化しにくい
セルロースファイバー=燃えにくい・防虫効果
このような付加価値の違いがあり、すべてを兼ね揃えた素材はないんです。
使っている断熱材や断熱方法を見ると、ハウスメーカーの重視したいポイントが分かります。
その重視したいポイントに共感できるかどうかが、選定の鍵になるかもしれませんね。
この記事がハウスメーカー選定のお役に立てば嬉しいです。