住宅を購入する上で最も恐ろしいのが欠陥住宅です。
ただでさえ住宅は高い買い物です。失敗したくはありません。
また、住宅は家族が毎日過ごす場所でもありません。
欠陥住宅になってしまったことで健康や安全が脅かされてしまうかもしれません。
大切なマイホームが欠陥住宅となってしまうことを防ぎ、家族を守るためにはどんなことに気をつければよいのでしょうか。
欠陥住宅はどこでも起こりうる
欠陥住宅とは、図面や契約通りに建てられていない家のことです。
本来の仕様とは違う工事や材料を使うことで、十分な性能や耐久性が得られなくなっています。
よくあるのが、家の傾きや雨漏りです。
建ててすぐこうした症状が出る家は間違いなく欠陥住宅です。
欠陥住宅は、どこの会社に頼んでも発生する可能性があります。
大手ハウスメーカーに依頼した住宅でも、結局現場で工事を担うのは下請けをする地元の工務店です。
その業者の質が悪ければ、有名な会社に依頼しても欠陥住宅になってしまいます。
もちろん、ほとんど知られていないような小さな工務店の方が高リスクであるのはいうまでもありませんが、誰にとっても他人事ではないということは肝に銘じておいてください。
なぜ欠陥住宅になるのか
欠陥住宅ができあがる一番の原因は、無理なコストカットにあります。
家を少しでも安く建てるため、安くて質の悪い材料を使ったり、部品を減らしたりします。
人件費を削減するために、いい加減な施工をしたり、簡単な工事に無断で置き換えてしまったりすることもあります。
経年劣化と欠陥住宅は違う
一つ注意しておいて欲しいのが、住宅の欠陥と経年劣化は別物だということです。
外壁にヒビが入ったり、壁紙に剥がれが生じていたりしたとしても、必ず欠陥であるとは限りません。
建ててすぐに不具合が生じたなら欠陥ですが、何年も経過している場合は単なる経年劣化の可能性も高いです。
どんなにきちんと建てられた家でも、年月が経過すれば必ず劣化します。
10年建てば、外壁に多少のひび割れが出るのも珍しくありません。
そのまま放置すれば家が傷んでしまいますし、それを防ぐためにはお金をかけてメンテナンスをする必要があります。
家の瑕疵(過失・欠陥)を補償する制度はありますが、いずれも一定の期間内であることが条件となっています。
これも経年劣化によって多少の不具合が生じるのは当然だとされているためです。
欠陥住宅を防ぐには
信頼できる業者に依頼する
欠陥住宅を掴まされないようにするためには、信頼のおける業者に依頼することが大切です。
家は一度完成させてしまうと見えなくなってしまう部分が多いです。
注文住宅であれば、建売住宅とは違って建築途中の様子もチェックすることができますが、素人が監視するのには限度があります。
実際に家を建てて住んでいる人の評判を聞いたり、欠陥や手抜きを防ぐための仕組みが整っているか確認したりしましょう。
大手なら絶対に安心とは限らない
格安で家を建てている業者は利益が少ないため、手抜きや欠陥が多くなりやすいというのは誰が考えても分かりますが、だからといって大手ハウスメーカーに依頼すれば絶対に大丈夫とは限りません。
大手ハウスメーカーの住宅でも、実際に工事をするのは下請けとなる地元の工務店です。
自社で直接酌人を抱え工事を行っているようなところはほとんどありません。
ハウスメーカーによって違いはありますが、建築にかかる費用のうちハウスメーカーの取り分は30~40%、工事をする工務店に渡されるのは70~60%程度といわれています。
直接住宅建設に使われるのは7割から6割程度、それ以外についてはハウスメーカーの営業や設計、インテリアコーディネーターなどの人件費や、モデルハウスなどの運営費用、広告、研究開発などに使われています。
この時、下請けに渡されるお金が少なければ、当然手抜き工事も発生しやすくなります。
家を買う人からは、十分なお金が下請けに渡っているかどうかは分かりませんから、大手に依頼したからといって必ず欠陥住宅にならないとは限らないのです。
では、地元の工務店に依頼すれば欠陥住宅を確実に防げるのでしょうか。
もちろん答えはノーです。
欠陥住宅の多くがコストカットから生まれている以上、経営が厳しくなりやすい中小規模の会社から欠陥住宅が生まれないという道理はありません。
もちろん優良な工務店も数多くありますが、中には悪質な工務店や品質にバラつきのあるような業者も紛れ込んでいます。
欠陥住宅を避けるためには、数多くある工務店から信用できる業者を探す必要があります。
大手ハウスメーカーにしても、工務店にしてもよく調べて信頼できるかどうか確かめなければならないという点には変わりありません。
また、どちらに依頼しても欠陥住宅のリスクはありますが、それぞれに長所もあります。
大手ハウスメーカーの場合、下請け工務店の品質をハウスメーカーがチェックします。
工事に不備があればハウスメーカーが工務店に対し責任を問うことになります。
大手はこのようなチェック体制や監視体制がきちんと整えられているため、たとえ手抜き工事が行われていても事前に発見しやすいです。
工務店の場合、工事する業者を自分自身で選べるという強みがあります。
また、支払った代金が全て施工する工務店に渡るため、コストカットに由来する欠陥住宅が生まれにくいです。
第三者にチェックを依頼する
欠陥住宅を防ぐもう一つの手段が第三者機関に調査を依頼することです。
素人が建築現場や完成した住宅をチェックするにも限度があります。
やはりプロに依頼するのが確実です。
住宅の調査には十万円ほどの費用がかかります。
しかし、数千万円もの買い物をすることを考えると、決して高いとはいえません。
もし欠陥が見つかり、修繕工事が必要にならば数百万円以上の費用がかかることを考えればむしろ安いといっても良いでしょう。
調査を依頼する業者を選ぶ際は、家を建てた業者と関係のない中立の立場の機関を選ぶようにしましょう。
不動産業者や建築関係業者が第三者を装って調査をしていることもあるためです。
もし欠陥住宅を買ってしまったら
もし購入した家が欠陥住宅だったら、もしくは欠陥住宅を疑うような事態が発生したら何をしたら良いのでしょうか。
専門家に調査を依頼する
素人が「ここが欠陥だと思う」といったところで相手にしてくれないことが多いです。
また、経年劣化の範囲だったり、正常範囲内の誤差だったりすることもあります。
まずは専門家に調査を依頼し、報告書を作成してもらいましょう。
調査により瑕疵が見つかったら施工業者に補償請求を行います。
瑕疵担保責任の期間を確認する
不動産には瑕疵があった際、売主や施工業者が補償をする制度があります。
ただしこの責任期間は有限で、一般的には1~2年で設定されています。
期間については契約書に必ず記載があるので、確認してください。
期間内に瑕疵に気がつくことができれば補償がありますが、反対にこの期間を超えてしまうと手遅れになってしまうことになります。
しかし、住宅の欠陥に気がついたのがこの期間を過ぎた後というケースが非常に多いです。
新しいうちは多少の不備があっても表にはなかなか出てこないのです。
そのため、建築後1年程度経過し、なおかつ瑕疵担保責任の期間であるうちに専門家による検査を受けて見るのがおすすめです。
お金はかかりますが、安全を買うためですから無駄ではありません。
契約書は必ず残しておく
欠陥住宅には、法令違反のものと契約書違反の2つがあります。
法令違反は誰が見ても明らかですが、契約書に反しているかどうかは契約内容を確認できるものが残っていなければ分かりません。
住宅会社と交わした契約書は必ず保管しておきましょう。
また、契約の際は必要な情報が十分に記載されているかどうかもよく確認してください。
建売住宅の欠陥の場合
建売住宅の場合、販売した不動産会社に瑕疵責任があります。
素人が欠陥を指摘しても認めてくれない場合が多いため、やはり専門家に調査を依頼する必要があります。
建売住宅の場合は、不動産会社だけでなく、宅地建物取引保証協会に申し立てを行うこともできます。
欠陥が認められれば、不動産会社が請求に応じてくれない場合でも、協会が代わりに保証してくれます。
マンションの場合
マンションには購入後2年以内に瑕疵が見つかった場合、法律により売主負担の修繕が義務付けられています。
壁紙が剥がれたり、ドアの開閉が難しくなってしまったりした場合は、無償で修繕してもらえます。
また、2000年4月以降の契約物件であれば、構造上重要な部分(基礎や壁、床・屋根)や防水についてはそれより長い10年間の保証があります。
どちらの場合も期間が定められているため、いち早く気がつき、発見次第行動することが大切です。
欠陥住宅の例
ここからはよくある欠陥住宅の例の中でも、表面に現れにくいものについていくつか紹介していきます。
どんな原因でどんな欠陥が生じるか知っていれば、住宅の欠陥にいち早く気がつくための手がかりになります。
木造住宅は湿気に注意
木造住宅の欠陥で最も気をつける必要があるのが、水濡れや湿気です。
木材は湿気に弱く、水分過多になるとカビや腐食の原因になります。
また、木造住宅の天敵であるシロアリも湿気が大好きです。
湿気は雨漏り以外にも、結露などから発生する場合もあります。
基礎が浅い
重い住宅を支えるのが基礎です。
木造住宅の場合でも、基礎はコンクリートでつくられます。
基礎は地面にしっかりと固定するために、ある程度地面に埋め込む形でつくられます。
この時の深さを根入れと呼ばれています。
十分に基礎を固定するためには、ある程度まで地面を掘らなければなりません。
穴を掘るのには手間がかかりますし、深い穴を掘れば不要な土も多く発生します。
土の処分にはお金もかかります。
工事の手間と土の処理にかかるコストを削減するために、浅い根入れで済ませてしまうと、基礎の強度が不足し、地震や台風に弱い住宅になってしまいます。
少しの揺れで家が傾いたり、歪んだりする原因になります。
基礎にはベタ基礎と布基礎の2種類がありますが、ベタ基礎の場合は12cm以上の根入れが、布基礎の場合は24cm以上の根入れが必要となります。
コンクリートの強度不足
コンクリートの強さは混ぜる水の量によって変化します。
水を入れれば施行下しやすくなりますが、強度が下がってしまいます。
そこで建築基準法では、コンクリートに混ぜて良い水の量を定めています。
しかし質の悪い業者の中には、施工を楽にして工事費用を抑えるために、基準値以上の水を入れている業者もいます。
水が多すぎるとコンクリートが固まった後も十分な強度を得られなくなります。
鉄筋が不足している
コンクリートの強度を高めるのに使用されるのが鉄筋です。
鉄筋とコンクリートは互いの欠点を補うため、この2つを合わせて使うことで高い強度を得ることができます。
しかし費用を安くするために鉄筋を少なくしてしまうと、必要な強度が得られなくなってしまいます。
鉄筋が減らされていると、地震に弱い家になったり、ひび割れが発生したりすることになります。
問題は、コンクリートを打ってしまうと内部がどうなっているか分かりにくくなってしまうことです。
見た目に分かりにくいからこそ手抜きがされやすい場所となるため、注意が必要です。
基礎と柱・土台の固定が不十分
住宅の基礎を土台・柱をつなぐ際には、「ホールダウン金物」「アンカーボルト」などが使われます。
基礎がしっかりつくられていても、建物と基礎がきちんと固定されていなければ強風や地震で倒れてしまいます。
しかし、金物の節約や工事の手間を削減するために、こうした固定の数を減らしたり不十分だったりします。
図面では何箇所も固定されているはずにもかかわらず、実際には家の四隅にしか固定がないということもあります。
用途にあった釘を使っていない
釘は用途や材料に合わせて適したものを使い分けなければなりません。
しかしたくさんの釘を用意するのはお金も手間もかかります。
コストを抑えるために、同じ釘を使い増したり、安い釘で代用したりすると固定が不十分になります。
建築直後はなんとか固定されていても、雨風や地震の揺れを受けるうちに固定がゆるくなったり、外れてしまったりすることもあります。
釘は数が多く、なおかつ家ができあがってしまうと見えなくなってしまうものがほとんどです。
完成後の検査でも見逃されてしまいやすい場所です。
適切に下地が使用されていない
壁や床の下には、見えているフローリングや壁材とは別に合板による下地を使用します。
壁や床の強度・機能性・防音性はこの下地によって大きく左右されます。
下地に本来とは違う安価な素材を使ったり、大きさの合わない素材を使ったりしてしまうと、想定していたものより強度・性能が劣ってしまいます。
中には工程を省くために下地そのものがないというケースもあります。
壁の強度不足は、耐震性・耐風製の低下につながります。
また、温度や音が伝わりやすくなってしまうため、冷暖房効率の低下や騒音問題も発生します。
断熱材の不足
壁の内側には断熱材を入れ、室内の温度が外気温に影響されないようにします。
断熱材は冷暖房の効率だけでなく、防音性にも大きく影響します。
また、室内と屋外の温度差により、壁の内側で結露が発生するのを防ぐことにも役立っています。
断熱材が足りなかったり、質が悪い材料を使ったりして本来よりも断熱性が劣ってしまうと、外気温の影響を受けやすくなり、光熱費が余計にかかる原因になります。
さらに、壁の内側で結露が発生すると、カビや腐食の原因になり、強度低下やアレルギーにつながることもあります。
防水が不十分
住宅の壁や屋根は雨風にさらされます。
家の構造を水分から守るためには、外側の防水が重要です。
木造住宅の防水方法としては、屋根などに防水シートを貼るのが一般的です。
この防水工事が不十分だと、雨漏りにつながり、柱や屋根を痛める原因になります。
屋根の張替えには多額の費用がかかります。
もし柱や梁など、家の構造部分に不具合が出てしまった場合はもっと大掛かりな工事が必要になります。
欠陥住宅は他人事ではない
マイホームを購入する時に最も怖いのが欠陥住宅。
有名な会社に依頼し、高いお金を払えば大丈夫だと思いがちですが、完全に欠陥住宅のリスクを避けられるとは限りません。
家を建てるなら絶対に気をつけなければならない問題です。
何よりも大切なのは信頼できる業者を選ぶこと。
住宅の完成後は見えなくなってしまう部分が多く、専門家でも発見しにくいケースもあります。
欠陥や手抜き、無理なコストカットが起こりにくい環境を選ぶことが大切です。
そして万が一欠陥住宅となってしまった場合は、いち早く問題に気がつき、対処することが大切です。
欠陥住宅に対する保証には期間が定められているため、期限までに気がつかなければなりません。
自分では気がつく自信がないという場合には、専門家に調査を依頼するのも良いでしょう。
また、問題が大きくなるうちに修繕することができれば、工事にかかる費用も時間も抑えられます。